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前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある10人のハロウィンパーティ The_secret_meeting. 1 10月も2週目となった、とある放課後。 柵川中学校の近くにあるファーストフード店に、珍しいメンバーが集っていた。 「本日はこんな所までわざわざお集まりいただき、ありがとうございます!」 集まった面々に、佐天がにっこり笑い掛ける。 「気にすることないぜい」 初めに答えたのは今日集まったメンバー唯一の男子、土御門。 「礼には及びませんわ」 続いて答えるのは、相変わらず豪奢な扇子を手放さない婚后。その両脇では、湾内と泡浮が微笑んでいる。 「いやーそう言ってもらえると嬉しいです。ターゲットと絶対に鉢合わせない店を考えたら、ここしか思いつかなくて」 と、ここで佐天がキョロキョロと辺りを見回す。 周りの客は皆、佐天と同じ柵川中の制服か、他の平凡な学生服に身を包んでいる。 常盤台やとある高校の制服を身に付けた学生は、婚后たちや土御門の他に誰も見当たらない。 「一応“見張り”もいるので、鉢合わせの心配はないはずなんですけどね」 「カミやんなら青ピと一緒に小萌先生の補習を受けてるんだにゃー」 「御坂さんもいつものファミレスで、初春と白井さんと一緒にいるはずです。 私は補習ってことになってますし、怪しまれることもないと思います」 「手回しも完璧なのですね」 「素晴らしいチームワークですわ」 「もちろんです。やる限りは徹底的にやりますよ! それでは」 コホン、とわざとらしい咳払いを一つして、佐天は高らかに宣言する。 「ここに第一回、『御坂さん応援隊による秘密会議』を始めたいと思いますっ!」 話は先週、セブンスミストでハロウィンパーティを開くことを決めた日まで遡る。 あれから数分後に、美琴は目覚めた。 目覚めた瞬間、上条に膝枕されていることに気付いた美琴が再び漏電したのは無理もないだろう。(幸いにも気絶はせずに済んだ。) 茹でダコのような美琴に合同でのパーティが決まったと告げ、各々の連絡先を交換してから、その日はそれで解散ということになった。 そして、それはみんなでセブンスミストを出た直後に起こった。 「カミやん」 寮に向かって歩き出そうとした上条を、土御門が呼び止めた。 「ん? なんだよ?」 「御坂さんを常盤台の寮まで送って欲しいんだにゃー」 「……はい?」 「だーかーらー。御坂さんを送って来いって言ってるんだにゃー」 流れる一瞬の沈黙。そして、 (ふぇ!? 何!? 何が起こってるの!?) (GJ! GJですよ土御門さんっッッ!!) (まぁなんと素晴らしい提案をなさるのかしらこの殿方は!) 各々が心の中で思い思いのことを叫ぶ。 「いや、だから何でそうなんだよ?」 「よく見てみるんだにゃーカミやん。御坂さんはまだ顔が赤いぜい。熱があるのかもしれない子を一人で帰らしていいと思うのかにゃー?」 「まぁ、言われてみれば……てかお前も一緒に行くだろ? どうせ一緒に帰るんだし」 「いや、俺はちょっと寄る所があるから行けないぜい」 にやりと笑う土御門。サングラスのせいで、その真意を読み取るのは難しい。 「そうなのか?」 「そうなんだにゃー」 土御門の言葉に何も疑問を抱かぬまま、上条は美琴の方へと顔を向ける。 「そういうことで御坂、2人で帰るぞー」 「ふふふ2人!?」 「ほら、持ってる鞄を寄こしなさい。それでは皆様、上条さんたちはお先に失礼します」 「ええっ!? ちょ、ちょっと待ちなさいってば!」 美琴の学生鞄を取り上げて、さっさと歩き出す上条。 真っ赤になって固まっていた美琴だが、鞄を取られてしまったので慌てて追いかける。 「ちょっと待ってやカミやん! ボクも……」 慌てて後を追おうとする青髪ピアス。 しかし、その肩を土御門がガッシリと掴んだ。 「何すんのつっちー! ボクも途中まで同じ方向って知ってるやろ!」 「まぁまぁ落ち着くんだにゃー」 そして、青ピの肩を掴んだまま振り返る。 「そちらのお嬢さんが俺たちに話あるみたいだぜい?」 「へ?」 土御門の言葉につられて、青髪ピアスも一緒に振り向いた。 その視界に飛び込んできたのは、 「ほほう。よくお分かりで♪」 ニヤニヤと笑う少女、佐天涙子の姿であった。 上条と美琴の姿が見えなくなるまで見送った6人は、解散はせずにセブンスミスト近くのファーストフード店に入った。 「それでは、みなさん。いきなりですが本題に入りますね」 話を切り出したのは、もちろん佐天である。 「まぁ、すでに土御門さんはお気付きのようですけど」 左隣に座る土御門に向かって問いかければ、ニヤリとした笑みが返ってきた。 それを肯定と捉え、佐天は話を進める。 「私が言いたいこと、それは、御坂さんと上条さんについてです。 もう誰が見たって明らかですが、御坂さんは間違いなく上条さんに恋してます。なのに!」 佐天はクワっと目を見開いて、言葉に力を込める。 「に、も、か、か、わ、ら、ず! 上条さんは全くそのことに気付いてないと思われます! これは大問題です!!」 そこまで言い切った佐天は、ぐっと握った拳を顔の前に持ってくる。 「だから私、佐天涙子は御坂さんの友達として、御坂さんの恋を全力で応援したいと思いますっ!」 「素敵ですわ佐天さん」 「さすがですわ」 小さな歓声と共に、湾内と泡浮が拍手する。 「もちろん私も同じ気持ちですわよ」 佐天の対面に座る婚后も負けてはいない。 「私、婚后光子も悩める友の為に一肌脱がせていただきますわ!」 そして拳の代わりに、豪奢な扇子を勢いよく開いた。 その様子に満足げな笑みを浮かべた佐天は、土御門と青髪ピアスの方を見据える。 「ということで、お二人にも是非協力していただきたいんです。どうかお願いしますっ!!」 その言葉と同時、強い思いを乗せた女子全員の熱い視線が、2人の男子高校生に注がれた。 しばしの沈黙を挟んだ後、青髪ピアスは降参とでも言うように、手のひらを上に向けて肩をすくめた。 「こんな可愛いコたちに頼まれて断れるわけないやんね」 そして右隣に座る土御門を見る。 「そうやろ、つっちー?」 「そうなんだにゃー。男土御門、喜んで協力させてもらうぜよ」 青髪ピアスと土御門が即答出来なかったのには理由がある。 青髪は姫神、土御門はインデックスやその他大勢といった、美琴同様に上条当麻に想いを寄せる少女たちを知っているからだ。 それでも2人はこの恋を応援することに決めた。なぜなら、 「カミやんに彼女できたら、失恋した女のコがボクのとこ来てくれるかもやしねー」 「そうだにゃー。まぁ俺は舞夏がいてくれればそれでいいんだぜい」 ……とは表面上の答えで。 ステイルの想いを知り、美琴が上条のために戦地へ赴くような少女であることを知る土御門としては、 この2人が結ばれるのが一番いいように思ったのだ。偽海原の想いも知ってはいるが、あれにはあれの「妹」がいるらしいから問題ないだろう。 ちなみに、青髪ピアスは割と本気でそう答えているようだ。 「ありがとうございます! すごく頼りにしますね」 土御門と青髪ピアスの返答に満足した佐天が笑う。 「お2人の協力も得られるとわかりましたし、初春は間違いなく乗ってくれるだろうし。 あとは白井さんを説得するのみですけど、まぁこれは初春と私で何とかします。だから」 佐天はテーブル中央に向かって右手を出す。それを見た5人が、次々と佐天の上に手を重ねていく。 「みなさん! ハロウィンパーティ、張り切っていきましょう!!」 直後、3種類の制服に身を包んだ6人の男女が、一斉に声を上げて団結した。 そういう経緯で先週、佐天涙子率いる『御坂さん応援隊』なるものが発足されたのである。 そして今日は、その記念すべき1回目の秘密会議なのだ。 「それにしても、あの白井さんが協力するとは思いませんでしたわ。佐天さん、あなた一体どのようにして説得なさったの?」 婚后が扇子をパタパタと扇ぎながら佐天に問う。 佐天は白井を説得した時のことを思い起こし、苦笑しながら一言だけ告げた。 「あれは初春の功績です」 「あら、初春さんの?」 そう、白井を説得出来たのは初春のおかげである。 『白井さん。隠し集めていた秘蔵画像集やパソコン部品がありますよね。 御坂さんにバラされた上にデリートされたくなければ、私たちに快く協力して下さい』 『な、何のことかさっぱりわかりませんの』 『ネタは上がってます。もしも協力して下さるなら秘密は守ります。 でも協力して下さらないならパーティには招待しませんから、仮装した御坂さんに会えなくなりますよ? きっと可愛いのに見れないなんて残念ですねー』 『くっ!? 卑怯な!!』 訂正。 活躍したのは、初春改め、黒春である。 「まぁ、それは置いといて! 話を進めましょう」 記憶の中で微笑む黒春の姿を頭の隅に追いやって、佐天は言葉を続ける。 「問題は上条さんが全く御坂さんを意識していないってことだと思うんです。どうやって上条さんに御坂さんを意識させるか、そこがポイントです」 「そうですわね。意識してさえいただければ何か変わるはずですわ」 「照れ隠しでついつい攻撃的になってしまう御坂さんの性格をどうにか出来ればいいんですけどねー」 「けれど性格を変えることが最も難しいのではなくて?」 「私たちが普段目にするような御坂様のお優しい一面を、上条さんにも知っていただければ……」 自らの考えを口にしては黙り込んでしまう少女たち。 早速手詰まりかと思われた矢先、ただ一人黙っていた少年が口を開いた。 「だったらまずは見た目で勝負なんだにゃー」 にやりと笑った土御門は、軽い調子で言葉を続ける。 「お嬢さん方。俺たちが開くのが何のパーティか、そこがヒントだぜい?」 「何の、と申しますと、ハロウィン……ああ!」 「ハロウィン“仮装”パーティですわ!」 「まぁ! つまり、御坂さんのコスプレ姿で上条さんを攻め落とす作戦ですのねっ!!」 目を輝かせて土御門の名案に賛同する少女たちに、土御門は肩を少しだけすくめた。 「攻め落とせるかは別として、少なくとも意識させることは出来ると思うぜい」 「そうと決まれば早速行動です! 初春たちにも連絡を」 携帯電話を取り出した佐天は、指先を忙しく動かし始めた。 「衣装買いに行くの、今週土曜でいいですよね?」 しかし、そんな佐天の携帯電話を、土御門がヒョイと取り上げる。 「いや、連絡するのは御坂さんだけだぜい」 「え? どうしてですか?」 「こうするんだにゃー」 少女たちが見守る中、土御門は何食わぬ顔で文面を打ち直した。 そして、その文面を見た佐天は言う。 「……ほほう。お主もなかなかの策士ですのぉ」 「いやいや、佐天さんほどじゃないぜい」 「では、キューピッドメール送信っ♪」 それは、御坂さん応援隊の作戦1号が実行に移された瞬間であった。 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある10人のハロウィンパーティ
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18スレ目ログ ____ ________________ 18-10 夢旅人(15-189) ミサカネットワーク上のアリア ~Aria_ on_ MISAKA-NETWORK 18-29 くまのこ(17-598) もし学園都市最強の電撃使いが初めからデレていたら 18-77 ソーサ(14-457) とある少年の帰還記念祭 5 第5話『プレゼントタイム』 18-106 くまのこ(17-598) とある不幸な都市伝説 7 3日目 中編 18-110 くまのこ(17-598) 小ネタ 未来的日本昔話 「ビリビリ」 18-127 たくみ(18-126) 何かのプロローグ 1 18-137 たくみ(18-126) 何かのプロローグ 2 18-156 ひろたか(18-154) 八月の詩 1 18-166 ひろたか(18-154) 八月の詩 2 18-173 月見里(12-676) 洒涙雨 1 ―前編― 18-192 夢旅人(15-189) 灯籠流し ~Love_comes_quickly 1 前編 18-201 くまのこ(17-598) もし常盤台の超電磁砲が初めからデレていたら 18-206 ひろたか(18-154) 八月の詩 3 18-214 かぺら(5-906) 夏休みの終わりには 18-231 つばさ(4-151) 素敵な恋のかなえかた 13 恋、はじまる 18-242 17-491 上条さんを悩ませたかったんです ガールズサイド(ほとんど美琴) 18-260 夢旅人(15-189) 灯籠流し ~Love_comes_quickly 2 後編 18-279 月見里(12-676) 洒涙雨 2 ―中編― 18-292 つばさ(4-151) 素敵な恋のかなえかた 14 恋、はじまる 18-303 くまのこ(17-598) もし最強無敵の電撃姫が初めからデレていたら 18-312 つばさ(4-151) 素敵な恋のかなえかた 15 恋、はじまる 18-325 ソーサ(14-457) とある少年の帰還記念祭 6 第6話『ウソとホント』 18-331 ソーサ(14-457) とある少年の帰還記念祭 6 第6話『ウソとホント』 18-343 くまのこ(17-598) とある不幸な都市伝説 8 3日目 後編 18-350 月見里(12-676) 洒涙雨 3 ―後編― 18-367 つばさ(4-151) 素敵な恋のかなえかた 16 恋、はじまる 18-389 くまのこ(17-598) もし32万8571分の1の天才が初めからデレていたら 18-397 ソーサ(14-457) とある少年の帰還記念祭 7 第7話『壮絶なるビンゴ大戦』 18-402 ソーサ(14-457) とある少年の帰還記念祭 7 第7話『壮絶なるビンゴ大戦』 18-417 つばさ(4-151) 素敵な恋のかなえかた 17 恋、はじまる 18-431 夢旅人(15-189) とある男女の恋愛生活 6 Always_On_My_Mind 18-441 またーり三世(18-440) 美琴 「黒子聞いて、新しい能力を開発したわ」 18-452 ソーサ(14-457) とある少年の帰還記念祭 8 第8話『壮大なるビンゴ大戦』 18-466 くまのこ(17-598) 酔い上さんは絡み酒 18-475 くまのこ(17-598) 酔い琴さんは泣き上戸 18-483 ソーサ(14-457) とある少年の帰還記念祭 9 第8話『壮大なるビンゴ大戦』 18-494 夢旅人(15-189) とある男女の恋愛生活 7 Always_On_My_Mind 18-510 くまのこ(17-598) とある不幸な都市伝説 9 4日目 上条編 18-519 D2 ◆6Rr9SkbdCs 小ネタ ぴろーとーく 18-529 久志(18-529) 小ネタ 着うた 18-540 ソーサ(14-457) とある少年の帰還記念祭 10 第9話『走れ、上条』 18-554 くまのこ(17-598) 3人のゲテモノメイドと+α ですの 18-562 ぐちゅ玉(1-337) よんでますよ、カミジョーさん。 1 18-569 ぐちゅ玉(1-337) よんでますよ、カミジョーさん。 2 18-586 い~む(16-135) 未来からの来訪者 13 ~5th day まこみことうま~ 18-605 くまのこ(17-598) もし御坂家の御令嬢が初めからデレていたら 18-608 くまのこ(17-598) 小ネタ 上と琴でイチャイチャさせてみた 18-651 琴子(4-448) 小ネタ 上条さんと家庭教師(美琴さん) 18-659 夢旅人(15-189) Just_Married ~私たち結婚しました 18-702 くー(18-699) どっちも負けず嫌い 1 18-715 月見里(12-676) ふたり 18-739 くー(18-699) どっちも負けず嫌い 2 18-754 アクセ(18-753) 二人の鈍感 18-766 17-491 友達ルート? 1 18-783 蒼(4-816) Presented to you 9 ―beginning・一二月三日②― 18-793 夢旅人(15-189) 愛してると言って ~Say_You_Love_Me 18-817 ソーサ(14-457) とある少年の帰還記念祭 11 最終話『すべての真相』 18-829 琴子(4-448) とある10人のハロウィンパーティ 1 Let s_do_something! 18-842 夢旅人(15-189) その香りは誰がための 18-858 久志(18-529) 小ネタ 上琴ドッキリマル秘報告 18-871 くまのこ(17-598) 集結!御坂DNA だとよォ 18-893 18-892 小ネタ 正夢? 18-933 くー(18-699) どっちも負けず嫌い 3 18-940 mm(18-939) 上琴の勉強会 18-956 くまのこ(17-598) いちゃいちゃって難しい 18-975 O.T.(18-974) この半径30cmの中で Way_to_Answer. ▲
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小ネタ Go to part3 上条「おい」美琴「なによ」上条「パート2、もう埋まっちまうぞ」美琴「うそっ!? まだ3週間ちょっとよ!パート1は2ヵ月半近くかかってたのに!」上条「何気にばかにするな。ま、作者が増えて来た証だろ」美琴「……まぁ…そりゃそうだけど…」上条「何だよ、もどかしいぞ」美琴「……なんでもないわよ…」上条「…俺達がいちゃいちゃしてるのを見るのが嫌なのか」美琴「ちがっ! …じゃなくて、なんか、こー……やっぱなんでもないっ」上条「はぁー… アレだろ、それ見て、楽しくてにやついてんだろ」美琴「っ!! …そうよ、悪いっ!?」上条「別に悪くはないさ、ていうかキレんな」美琴「……だって……」上条「ほら、もうすぐパート3だ。まだまだ書いてくれるんだから楽しもうぜ、なっ?」美琴「…分かった」上条「ほら、拗ねるなって。笑って終わろうぜ」美琴「………」上条「みんな、俺達が好きなんだ。お互いを好きなんだ。それだけだ、別にからかってはいないぜ?」美琴「分かってる、わよ… …よしっ!」上条「つーわけでみなさん」美琴「次もよろしくね!」上条「御坂がにやにやするいちゃいちゃを随時お待ちしておrぎゃあああ!!」バリバリバリ美琴「よけーな事は言わんでいいっ!」 ――――――Go to part3:http //jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/6947/1264418842/
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前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/恋する美琴の恋愛事情 目撃美琴の嫉妬事情 御坂美琴にとって上条当麻と言う少年は様々な意味で特別な存在である。 ひとつに、学園都市最高の7人の超能力者(レベル5)第3位である美琴に対し、分け隔てなく(むしろ無遠慮なくらい)接してくれる人間である事。 ひとつに、美琴のDNAマップを使い量産されたクローン"妹達(シスターズ)"を絶対能力進化(レベル6シフト)実験と言う名の殺戮から救い出してくれた命の恩人である事。 そして、ひとつに、美琴自身は知らない事になっている「御坂美琴とその周囲の世界を守る」という約束をしてくれた美琴にとってのヒーローである事。 それ以外にも要因を挙げればきりがない程に美琴の心に上条当麻と言う存在が占める割合は非常に高い。 そのためか、美琴の感情は彼の一挙一動に激しく掻き乱され、気が付けば彼を想い時間の経過を忘れると言う事も珍しくもない状態であった。 「べ、別にあんな奴の事なんて何とも思ってないわよ!」 とは、本人の弁だが、そのセリフを顔を真っ赤にして、視線をうろたえさせ、しかも、その台詞の後に部屋に帰ってから後悔してベッドに突っ伏すような状態から、美琴を知る人間なら誰もが恋している事に気付くだろう。まあ、本人も自覚しているようなので、そこに突っ込むような野暮な人間は当麻を目の敵にしている白井黒子以外いないのだが。 さて、そんな御坂美琴だが、毎日のように上条当麻を探して彼の登下校経路となる公園に待機していたり、偶然出会えれば、嬉しさのあまり「勝負しなさい!」などと声をかけたりはするが、全くと言っていい程素直に自分の気持ちを伝える事は出来ていない。 そんな様子が御坂美琴を知る友人の一人である佐天涙子に言わせれば「かわいいのぅ…」とのことなのだが、進展の無さに美琴自身凹んでしまっていたりもする。 「アイツにとって私ってどんな存在なんだろう……」 詰る所、美琴の悩みはそこに集約される。 今まで美琴にとって他人とはある程度の距離を取って当たり前の存在であり、近づきすぎる事は無かった(白井黒子や初春飾利、佐天涙子という例外はいるが)。そのためか、ここまで他人の気持ちを知りたいと思わなかったし、知る事に対する恐怖を抱く事は無かった。 つまり、初めての例外が上条当麻と言う存在であり、初めて異性として気になる男性なのだ。 そして、今日も今日とて御坂美琴は自分の気持ちを欺きつつも、己が欲望に忠実に行動を開始するのであった。 ******** 「そろそろ通るころよね……」 美琴は腕時計の時間を確認しつつ、公園の入り口に視線を合わせる。普段なら大体このくらいの時間に目的の人物はここを通るのだが、残念ながらまだその気配はない。 「~~~♪」 美琴の形の整った小さな鼻からアップテンポのリズムが刻まれる。 昔では考えられなかったことだが、上条当麻への恋心を自覚して以来、こうして待つ時間さえも楽しく感じられるようになった。なんだか小さな事に悩んでいた自分が馬鹿らしくなるなぁ、と美琴は自分の変化に嬉しさを感じてしまう。そんな変化を察知した黒子が壁に向かって「あの類人猿がぁ!!」とヘッドバッドしていたのはここだけの秘密だ。 「あっ」 そうこうしているうちに公園の入口に見覚えのあるシルエットが目に入る。特徴あるツンツン頭をしている学生などお目当ての人物以外にはいまい。 「このぉ、遅い…ぞ……」 いつものように照れ隠しの憎まれ口を叩きながら、電撃を浴びせようとした瞬間、当麻の隣にもう一つ別の影を見つける。しかも、それは美琴のよく知る修道服を着たシスターとは別人だ。 「え?誰?」 何も悪い事はしていないのだが、美琴は二人に見つからないように自販機の裏に隠れた。 「……また違う女性……」 当麻に女性の影が付きまとうのは今回に限った話ではない。ある時は大人しそうな胸の大きな年上女性が、ある時は際どい恰好をした胸の大きなやはり年上女性が、ある時は大覇星祭の実行委員をしていたやはり胸の大きな女性が当麻の傍にいた事を知っている。 『……考えてみたらみんな胸の大きな人ばかりじゃないのよ……』 と、自分の胸を見てみるが、見たところで変化は無いので、とりあえず棚上げしておく。そんなことより今は当麻とその連れの女性である。 「……そしたら、青ピのやつが……」 「そうなんだ……」 仲良く並ぶ二人は楽しそうに会話している。連れの女性、日本人形のように長い黒髪を揺らす同級生と思われるその女生徒は表情に乏しいのか、美琴のように感情の変化はあまり感じられないが、恋する乙女として、彼女も当麻と会話する事が非常に嬉しく感じている事は解ってしまう。 そして、その光景を眺める美琴は、ズキリと胸の奥に謎の痛みを感じてしまう。 「やだなぁ、なんでこんな気持ちになるんだろ……」 今すぐ飛び出して二人の会話の邪魔をしたい。そして、当麻をあの女性から引き離したい。そんな欲望が美琴の心を支配しそうになる。 『でも出来ないよね……』 そんな事をすればあの女性が悲しむのが判ってしまう。自分が同じことをされれば、どれだけ辛いか、理解できてしまう。 『・・・・・・』 だから今の美琴に出来る事は黙ってこの場を後にする事だった。 胸の奥の痛みがさらに増した気がしたが、それでもなんとかそれを誤魔化しながら美琴は公園を後にした。 「……?」 「どうしたの、上条君?」 何故か急にその場に立ち止まり辺りを見回す当麻に、連れの女性、姫神愛沙は不思議そうに首をかしげる。 「いや、普段ならこの辺でビリビリーっと電撃が飛んでくるはずなんだけどな……」 「……何の話?」 姫神には言葉の意味は理解できなかったが、なんとなく女性の影がちらついた気がしたので、「天罰」と称して鞄の角で当麻のお尻を叩いておいた。 「何するんだよ、姫神ぃ……」 理不尽な暴力に抗議を示すが、姫神は我関せずといった様子で先を進んでいく。 なにか悪い事をしたのか?と当麻は頭上に?マークを浮かべながらいつもの口癖を呟く。 「ふ、不幸だ……」 ******** 「・・・・・・」 寮に戻ってからも美琴は自分の気持ちに悩まされていた。 部屋に戻った時、白井黒子の姿は無かった。それが美琴にはとてもありがたかった。今の美琴の顔を見ればきっと黒子の事だから心配して色々と立ち回るだろう。それが解るだけに余計に今の表情は見せられない。 美琴はさっさとシャワーを浴びて、パジャマに着替えると、ベッドの中に入る。体調不良だという事にすれば黒子に表情を見られずに済むからだ。 「当麻の隣にいた女性……」 美琴ですら男性的にみてあの子が可愛いと感じずにはいられない女性であることは判った。だからこそ、美琴の中にある種の感情が湧きあがるのが止められなかった。 あのとき感じた気持ち。上条当麻の隣にいる女性に向けたどす黒い気持ち。その正体が何なのか、美琴には理解できている。だからこそ自分が許せなかった。 『私って嫌な女なのかな……』 思い返せば「幻想御手(レベルアッパー)事件」において無能力に苦しむ佐天涙子の気持ちを汲むことが出来なかった。また、「乱雑開放(ポルターガイスト)事件」でも、自分の生徒たちの解放に奔走する木山春生の想いも汲みとる事が出来なかった。そう考えれば、自分がいかに他人を理解せず、独りよがりな性格をしているのかを痛感してしまう。 「当麻ぁ……」 それでもやはり美琴は諦められなかった。 今までどんな困難にも立ち向かい、勝利を勝ち取ってきた彼女にとって、自分の想いを裏切るような事は出来なかった。だから決意する。 「明日、私の想いを告白する」 その決心に揺らぎはない。 確かに、彼に既に好きな人がいて、自分の出番などが無い状態であっても、立ち止まれない。それが御坂美琴という人間なのだから。 「ただいまですの」 部屋の扉が開く音がして、部屋の中に白井黒子が入ってくる。そして、美琴のベッドの盛り上がりを見て黒子は心配そうに声をかけた。 「お、お姉さま、何かありましたのでしょうか?も、もしや、あの類人猿めがお姉さまに何かしやがりましたのでしょうか!?ゆ、許すまじ、類人猿!!」 と、勝手に事件を想像し一人盛り上がる黒子。まあ、何もできなかったから今の状態なんだけどね……とは、流石に口が裂けても言えなかった。 「大丈夫よ、黒子。ちょっと体調がすぐれないだけ。一晩寝て、回復するから、今日は休ませてね」 布団から顔を出さずにそんな事を言う美琴に何か思うところがあるのか、黒子はしばらく立ち止まっていたが、表情を崩すと 「判りましたわ。ではお姉さま、明日の朝はまたいつもの笑顔をお見せくださいませ」 と、自分の机に戻っていった。 『うん。必ず』 パートナーの心遣いに美琴は荒れる心が落ち着き、安らかな眠りにつく事が出来た。 ******** そして、朝。 普段よりも早くに起きた美琴は制服に着替えると、慌ただしく部屋を出て行った。同室の黒子を起こさないようにと気を配ってはいたためか、黒子が起き出す気配はなかった。実際、黒子は既に目を覚ましていたのだが、美琴に余計な気配りをさせないために寝た振りを続けていたのだが。 「行ってらっしゃいませ、お姉さま」 美琴が出て行き、扉が閉まった後、黒子はそっと呟いた。 数十分後、美琴の姿はいつもの公園にあった。 早朝とだけあって、人影はなく、空気は冷たかったが、おかげで美琴の思考はよりはっきりとする事が出来た。 「さて、本当の勝負はこれからよ、御坂美琴」 上条当麻の出没は運任せだ。 どこにでも現れるし、どこにもいない場合もある。 世界中飛びまわってたかと思えば、学園都市のふとしたところで出会う事もある。 それでも、この公園が美琴と当麻にとっては馴染み深い場所である限りは、ここで待つべきなのだ。 「今日こそ」 昨日の決断は未だに揺らぐ事は無い。 そして、先に延ばしていい事でもない。 だからこそ、こんな朝早くから美琴はスタンバっている。嫌なことから逃げない美琴らしい作戦なのだ。 「普段のアイツの行動からいえば学校に間に合わせるために通る時刻が朝8時。遅刻ギリギリ通るとしても30分の遅れ程度。そうなるとまだまだ時間はあるわね」 例外的に早く出る場合を考えての今の時間だが、やはり心を落ち着かせる事も目的である。余裕の無い状態で告白での失敗は許されない。 スー ハー スー ハー 深呼吸をし、気持ちを落ち着かせる。 そうだ、自分はレベル5。超電磁砲の御坂美琴なんだ。怖いものなんてない。 そう言い聞かせるが、それでも怖い物は怖い。特に「自分だけの現実(パーソナルリアリティ)」すら凌駕するこの気持ちは第1位と対峙したときよりも恐怖感を与えてくれる。だから 「(ポンッ)何してるんだ、こんな時間にビリビリ」 と、背後から肩を叩かれたときには飛び上るほど驚いてしまった。 「!!?っ!! !? !!!」 しかも、驚きすぎて声にすらならない状態で、振り返るとそこには目的の少年がいた。 「あー、スマン。驚かせたか。って、落ち着けよ、御坂……」 美琴のあまりのパニック状態に流石の当麻も罪悪感を感じたか、美琴の目線に合わせて両肩を掴み落ち着かせようとする。 「!!な、なんで!?」 ようやく声を出せた美琴が言えた言葉はその疑問詞だけだった。 「あー。ほら、昨日御坂と会わなかっただろ。なんか毎日会ってたのに、昨日は会えなかったからさ、なんか物足りなくてな。で、今日は朝早く出れば会えるような気がして」 当麻は照れくさそうに髪をいじる。 「昨日はあれだったんだぞ。御坂がいない珍しい状況だったから、公園で2時間も待ってしまって風邪ひくかと思ったんだぞ」 自分を待ってくれてた。 当麻のその台詞に美琴は感極まりそうになった。もちろん表情は変えずに、あくまで冷静な態度を取り続けている。 「ふーん、アンタはそんなに私に会うのが楽しみだったんだ?」 そうだ、私はそれを楽しみにしてたんだ。 二人だけの時間。そこにそれを求めて、私はいつも楽しみに待ってたんだ。 「はは。まあ、上条さん的には御坂に追い回されるのはご免こうむりたいんだけどな。それでも、やっぱりあの時間が楽しかったみたいだ。おかげで姫神には怒られたけどな」 恐らく、その姫神ってのが昨日の女性の名前だろう。 そして、怒られて当然の行為を当麻はしたのだ。でも、そのことがとても嬉しく思えてくるからどうしようもない。 「じゃあ、これからも追い回していいのね?」 ううん。追いかけるだけじゃない。叶うなら二人並んで歩きたい。同じ速度で歩みたい。 「いや、追いかけまわされるのはもうご免だけど。でも、御坂と同じ時を過ごすのは悪い気はしないし、これからもお願いしたいかな」 あー、もう。この男は判っていってるのだろうか。いや、理解しろって方が無理なのだろうけど、その台詞はプロポーズなんだぞと言いたくなる。だから、顔の筋肉が弛緩してもう表情を作る事なんて出来そうになかった。 「御坂?」 もちろん、顔だけじゃない。体中の筋肉が、精神が、魂が弛緩する。 「う……」 「う?」 「……うにゃあああぁぁぁぁ!!!!」 「って、またかよー!!」 そしてその結果は相変わらずの電撃漏電となり、当麻はしばらく漏電対策の為、美琴の頭に右手を置いたまま過ごす事になった。 「……ああ、不幸だ……」 結局、こうして美琴の告白はうやむやになってしまうのだが、なんとなく美琴はそれでいい気がしていた。 なにせ、こうやって当麻は自分を見ててくれる。心配してくれる。甘えさせてくれる。今はその幸せに浸るだけで良いような気がした。 「ふふふ、とうみゃぁ~~……」 「何故に猫語なんですか、美琴さん……」 根本的な解決になってないけど、もし今後この関係に変化が現れた時こそ自分の気持ちを伝えるべきだろう。だからもうしばらくの間だけ、私のわがままに応えなさい。大好きな当麻。 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/恋する美琴の恋愛事情
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前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある未来の・・・ 2.初めて 「……朝?」 突如閉じた瞼から光が入ってきた事を感じて目を覚ます。 視界は数秒ぼやけていたが、自分のいる場所が常盤台の寮であると分かる。 「黒子……?」 ルームメイトの名前を呼んでみるが返事はない。 どうやら出かけてしまったようで、ハンガーにも制服がかけられていない。 美琴は風紀委員(ジャッジメント)の仕事でもあるのだろうと判断してベッドから体を起こす。 「……昨日……は?」 ふと、自分が昨日の自分を振り返る。 だが、それと同時に頬が一気に熱くなり、またベッドに倒れこんでしまった。 (アイツに……だ、抱きしめられた!!?) 昨日の夜、美琴は未来からやってきたと言う三人の子供たち出会った。 そして、その帰り道、美琴が常盤台の辺りまで来たときに上条に抱きしめられたのだ。 もっとも、美琴は告白まがいの言葉まで言っているがそれを凌ぐ(正確には忘れさせる)破壊力があった。 「うぁ、ああああああああああああああああああ!!」 ルームメイトがいないのをいい事に叫んでしまい ベッドの端から端までを落ちない程度に寝返りを打つ。 (ど、どうしよう、抱きしめらた……!きょ、今日はどんな顔で会えばいいのよ!!) いままで鈍感で好意を持っていたのに気づかないような男性にいきなり抱きしめられた。 初恋の相手であって、しかもその男性が自分の理性を壊すほどの人ならば レベル5と言っても純情な乙女である美琴には今日顔を合わせるのすら超えられないくらいの壁だった。 と、悶々しているところで突然「ゲコゲコゲコ」とカエルの鳴き声が耳に響いた。 「ひゃっ!」 いつも聞いているはずの音なのに普段出ないような声が出てしまう。 恐る恐るカエルの鳴き声の着信音がするゲコ太の携帯を手に取り誰からの連絡か確認する。 「ア、ア、ア、アイツからメール……?」 それは彼女が悶々としている原因の少年、上条当麻からだった。 のろのろとメールの受信画面から振り分けボックスの『馬鹿』の項目を選んで新着のメールを開いた。 「さて、とただいまからお食事を作ろうと思うのですがいかがいたしましょう、姫?」 上条当麻はメールを送り終えると、真っ白な修道服に身を包んだ少女に問いかけた。 時刻は十一時をさしていて、昼食にはまだ少しはやい位なのだが、今日は昼から予定があるので早めに作ったのだ。 だが、肝心の修道服の少女は、部屋の中央で荷造りを始めていた。 「あの~インデックスさん?何故荷造りを始めてるんでせう?」 その様子が非常に恐ろしくて、声をかけてみる。 インデックスと呼ばれた少女はゆっくりと振り返ると 「とーま、昨日言ったよね?」 なんだか、異常に目が輝いていた。 「昨日?なんか言ってたっけ?」 上条には覚えがなかった、そもそも人生でベスト10に入るくらいの大事件が起きた次の日なので 少女が荷造りを始める理由は上書き保存されてしまっている。 「今日からこもえとあいさの三人で食べ放題!飲み放題!一週間春の幸祭りにいくんだよ!」 今にも飛んでいきそうな勢いの元気なのは食い放題が理由だったようだ。 「あ……そー、いえばー」 そういえば、一週間くらい前から毎日その事を言われていた気がした。 上条の担任である月詠小萌が彼女の専攻である発火能力(パイロキネシス)の研究が最近評価され 証をとったらしく、その副賞に一週間『外』への旅行券をもらったと言う話だったはずだ。 「まー、警備員(アンチスキル)とかに捕まらないようにな」 「とーま!私のどこが怪しいって言うの!?」 「だああああああああ!わかった、わかった!早く行かないと置いてかれるぞ!?」 服装からですが!?とツッコミを入れてしまいそうだったが なんとか我慢して、荷造りを終えたインデックスを送り出す。 インデックスは最後まで怒っていた様子で上条を睨んでいたが 寮から出て小萌先生の住むアパートへ向かう頃には上条のほうを向いて笑顔で手まで振っていた。 (……タイミングいいっつーか、問題はこれで消えたな) ふぅ、と息を吐き、閉めた玄関のドアにもたれる。 問題、と言うのはあの三人とメールを送った人物の美琴の事だった。 (インデックスには悪いけど、仕方ないよなぁ) 正直、インデックスにはかなり不快な思いをさせるかもしれないし 少しの間だけでも離れさせる方法は一夜では思いつかなかったので上条はかなり安心していた。 メールの内容は必ずインデックスが怒るものだったからだ。 (御坂を家に入れるなんていったら多分頭を噛み砕かれるだろうからなぁ) あの三人も来る予定なので、いつもの三倍噛まれるのは必至だ。 もう一度、ふぅ、と息を吐くとこれから家に招く四人を思い 同時にインデックスに心の中で謝りながら昼食も作らず 四人を迎えにいく準備を始めた。 時刻は昼の一時をさす頃、上条は待ち合わせの場所、昨日美琴が能力を暴走させた公園まで来ていた。 ただ、彼の足取りは重い、待ち合わせに自販機の前を指定したのはいいが 公園に向かう途中に昨日自分が何をしたかを思い出してしまったのだ。 (会うのはいいけど会って何話せばいいんだ!?御坂だけが来てたらかなり気まずいぞ!?) 会う約束をしてしまったのはもう仕方ない事だが、 上条は先にあの三人組がいることを祈りつつ公園内に入った。 「げっ!?」 嫌な予感は的中した。 御坂美琴が自販機の前でキョロキョロと忙しなく辺りを見回していた。 待ち合わせの時間まで後三十分近く時間があるにもかかわらず、だ。 (上条も気持ちが逸ってしまい、かなり早く来てしまったのだが) (まだ、気づいてないよな?) 美琴の視界に入らないように後ずさりをして公園の出口へ向かう。 やっぱり三十分後にしよう、そうしようと自分を言い聞かせながら 公園出口直前まで来たところで (……猫?) 公園に入った直後には気づかなかったのだが 美琴が辺りを見回しているのは待ち人を探しているのではなく 人が近くにいないかを確認していたようだ。 上条は悲しい気持ちがしないでもないが、美琴に見つからないように木の陰に隠れた。 (なんか変態さんみたいだな……) 周りに人がいたら上条は確実に風紀委員か警備員を呼ばれお縄についていただろうが 幸い人のくる様子はなかった。 美琴は猫に手を伸ばすが、猫のほうが怯えてしまっていて美琴と距離をとる その開いた距離を美琴が詰めるが猫はやはりその分だけ距離をとってしまう。 (な、なんなんだ、あの可愛い生物は!?ほ、ホントに御坂か!?) 必死に猫を手で招いているが、猫は逡巡しながらも近寄ろうとはしない。 その構図がなんともいえないもどかしさと可愛らしさを演出していて 上条の本能を刺激していた。 (ち、近寄りたいが、近寄れな……って、あれ?) さっきまで寄りかかっていた木がなくなっていた。 上条の寄りかかっていた木は細い木だったのだが、かなり老木だったのか 見るも無残な形で見事に近くにあった気にもたれて折れていた。 「うっそ、だろ?ぎゃあああああああああああああ!」 バランスを保とうとしたところで、柵に足を引っ掛け 盛大に上条はこけてしまった。 「何してんのよ……アンタは!」 どうやら、お嬢様に見つかってしまったようだ。 目の前には、ツンツン頭の少年、上条当麻が地面に倒れている。 待ち合わせには後10分くらい余裕があるだろうか、美琴は上条が時間より早く来ていたことに驚いていた。 「ちょっと、へ、返事しなさいよ!」 上条は数秒何かに悩んでいたのか倒れこんだままだったが やれやれ、と呟きながらゆっくりと立ち上がった。 「えーっと、猫とコミュニケーションをとろうとして逃げられる健気な美琴タンを観察していました」 「――――な!?あ、あんた!始めっから!?」 人が近づいて来たら、彼女の電磁センサーが知らせるはずだが 猫に集中しすぎてしまったようだ。 (しかも、コイツいま私のこと名前で――――!?) 上条がいつからいたのか、名前で呼ばれたこと、恥ずかしい姿を見られたこと、と 様々な事柄が美琴の頭をぐるぐると回っていて、考えがまとまらない。 「おーい、御坂……?」 「ひゃっ!ひゃい!?」 ビクッ!と体を硬直させて返事をしてしまった。 上条は先ほどから様子のおかしい美琴を心配してか彼女に近づいていく。 「ん……!?」 「顔赤いけど、熱はないみたいだな」 額に手を当てられた。 右手で美琴の額を押さえて、あいた左手で自分の額も押さえて熱を測っている。 それだけならよかったのだが。 (ち、近い!?何でそんな近くでやんのよ!?) 少し体を伸ばせば、キスが出来てしまうくらい近い距離だった。 ただ、上条はそんなことには全く気づかない。 「大丈夫か?」 呑気に聞いてくる。 「ぅ……うん、だい、じょうぶ」 内心全く持って大丈夫ではなかったが、何とか理性を保って答える。 「あ……」 答えると同時に額から手が離れた。 上条の手の体温も離れていってしまい、妙に切なさが残った。 「……もう少しであいつらも来るかな?」 上条が公園にある時計を一瞥してそんなことを言った。 美琴も時計を見る。時刻は1時半を指していた。 「そういえば、今日は何処に行くの?」 待ち合わせの時間になったはいいが、美琴は肝心なことを聞いていなかった。 メールにも『一時半に公園に来てくれ』としか書かれておらず 美琴も期待や想像(妄想?)をするだけで聞こうとはしなかったのだ。 「ん?言ってなかったっけ」 「言ってないわよ」 上条は何故か照れたようにポリポリと頬を掻く。 顔も少しだけ赤かったが、美琴は気づかなかった。 「……俺んち」 ……その時、美琴の中で時間が止まった。 彼女の後ろから「あー、いたいた」とか「遅れてわりぃ」とか「パパーママー」と言う 声が聞こえた気がしたが、耳に全く入って来なかった。 「おぉ!ここが親父の住んでいた学生寮か!」 一人はしゃいだ声を出しているのは上条当麻の一人息子(の予定)の当瑠だ。 その声があまりにも大きかったので、部屋から住人が顔を出すのではないかと 上条は内心ひやひやしたが、どうやら寮内には隣人の土御門を含め留守にしているようだ。 こんな偶然があるのだろうか?と疑問に思ってしまったが考えていても仕方ない、と判断し いつ大きな声を出すか分からない少年を押しながら自分の部屋に入った。 「お邪魔しまーす」 鍵を開けて一番初めに入ってきたのは美詠だ。 その次に当瑠がはいったのだが、美琴と美春が中々入ってこなかった。 「どうした?」 美琴は美春と手を繋いだまま俯いていた。 美春は美琴と上条を何度も見ながら「はやくはいろー」と言っているが 美琴が入ってくる気配はない。 「……ほら、入れよ」 美琴の腕を持って引っ張る。 「あ、ちょっと!!?」 彼女は驚いた様子だが、気にせずに玄関を上がらせて 五人では少々狭い居間に押し込む。 「一応、鍵は閉めて、と」 隣人の土御門はまるで自分の部屋かのようにドアを開けてくるので 用心してドアの鍵を閉める。 そして、居間に行き、美春を抱いて座っている美琴の隣に腰を下ろした。 「で?お前ら聞かせたいことがあるっていってたよな?」 「あぁ、やっぱそのことか」 当瑠は予想していたのか、別段表情を変えなかった。 上条は昨日の夜大まかに説明を受けたのは美春の能力くらいだったので 当瑠や美詠の未来の話には興味があった。 「聞きたい?」 「……聞きたい」 答えたのは上条ではなく美琴だった。 今まで黙っていたので上条は少し驚いた。 「じゃぁさ、まずこの写真見てよ」 写真を取り出したのは美詠だ。 上条と美琴は机の上に出されたそれを食い入るように見た。 写っているのは、髪の毛をツンツンさせた三十代くらいの男性と 茶色の髪で男性と同じくらいの年の女性が、笑っている写真だ。 ……どこをどうみても上条と美琴だが、今のような幼さはなく 成熟した大人の印象はしっかりとあった。 上条は写真を見ている時、隣にいる美琴をチラリと見て 写真の女性の顔を確認したり、美琴の体のほうに目線がいってしまい ドキリ、としてしまったが、美琴の方はいつになく真剣な目で写真を見ていた。 「まずは、これで二人が結ばれるって事は信じてくれたかな?」 美詠がそんなことを言ってきた。 上条と美琴は目が合ってしまい顔を赤くしてそらし、頷いた。 「ま、そのことを踏まえたうえで、これから話すことを聞いてくれよ」 当瑠がニヤニヤしながら言ってきた。 上条はその表情に得体の知れない不安を感じた。 「お、おい……なんか嫌な予感がするんだが!」 「じゃっ、二人がどれだけいちゃいちゃしてるか言っちゃいますかねー」 「いぇーい!美春もききたーい!」 やけにテンションをあげてる息子と娘。 上条の不安はどうやらまた的中してしまったようだ。 美琴のほうを見ると彼女もまた上条と同じ気持ちで不安そうな表情をしていた。 「じゃー、まず朝起きた時に……」 「「や、やめろおおおおおおおおおおおおおお!!」」 その後、たっぷり三~四時間くらいかけて拷問のような地獄が続いたのは言うまでもないだろう。 戦いは終ったと御坂美琴は確信した。 悪魔の口から悪夢のような言葉の数々が途絶えたからだ。 (私は、長く苦しい戦いに勝った!) 悪魔は今までにないほどに強大で凶悪だった。 しかし、美琴は負けるわけにはいかなかった、負ければ自分が自分でいられなくなるのだ。 そして彼女は勝利した、勝利をかみ締めると共に隣で同じように戦った戦友を見た。 「う、うだー」 戦友は机に突っ伏した状態でうな垂れていた。 疲労は彼女以上にあるのかもしれない。 思えば美琴自身よりも隣の戦友、上条当麻のほうが悪魔からの攻撃を多く受けていたような気がする。 「ちょっと・・・・・・アンタ大丈夫?」 突っ伏したままぶつぶつと色々呟いているので流石に心配になったが 彼の体を触るのにはためらいを感じた。 悪魔の攻撃は予想以上に自分を奥手にさせてしまったらしい。 「御坂さん、上条さんはもうダメかもわからんです」 今ならアニメやマンガで使われる『チーン』と言う擬音も当てはまるのではないかと美琴は思った。 「いやー、予想以上のダメージですなー」 悪魔の一人目、当瑠は達成感に満ちた顔だ。 戦友の上条に似ているせいなのかイラッときたが笑っている顔も似ているので直視は出来ない。 「お母さんも顔真っ赤にしちゃって、可愛いな~」 悪魔二人目、美詠も当瑠ぐらいに笑顔になっている 上条と美琴の反応に満足した様子だ。 「ママ、かわいいー」 ……小悪魔も混じっているようだ。 「あ、あんた達覚えてなさいよ」 馬鹿にされたのが悔しくて、負け犬かそこらのかませ的台詞を吐いて もう、今ここで焼っちまうか、と思い直すが。 ぐぅ~。 腹減りアピールをしてきた人物がいた。 「・・・・・・アンタ、お腹空いたの?」 その人物は上条だった。 「か、上条さんは昼食をとっていないのですよ」 攻撃されていた時とは別の疲れを見せる上条。 「どうして、食べなかったのよ?時間ならあったでしょ?」 「うぅ、そ、それはですね・・・・・・」 食べなかった原因は美琴自身にもあるのだが 美琴はそれには気づかないし、彼女は何も悪くないが。 「・・・・・・じゃぁ、ご飯にする?」 ぱぁっと上条の表情が明るくなっていき、突然立ち上がった。 「おぉ!おい、お前ら準備しろ!飯食いに行くぞ!」 上条は外食に行く気満々らしい。大笑いしている三人組に声をかけ 意気揚々と言う言葉がぴったりの調子でサイフを手に取ると玄関へ一目散へ駆け出した。 「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」 上条に続いていく当瑠と美春を引き止め、玄関で靴を履こうとしている上条を 掴んで元いた居間に引き摺り戻す。 「な、なんでせうか?早く行きたいのですが」 「誰が外食って言ったのよ!!馬鹿!」 美琴は自分の体温が上がっていくのを感じた。 きっと頬は真っ赤になっていて、目も泳いでいるのだろうと考える。 「他に何があるんだよ?」 「このクソ鈍感野郎が気づけよ馬鹿が」 罵ったのは美琴ではない、美詠だった。 美琴は驚いて美詠をみる。 美詠に罵られた上条は更にわからない、と言う顔をした。 「ほら、お母さん!言ってやって下さい!」 「え?あ・・・・・・う、ん」 逆に話を振られて美琴はどもってしまった。 正直思い返してみると外食のほうがいいのではないかと思ってしまった。 美琴が思い描いた光景はまさしく家族や夫婦のそれだからだ。 「わ、私が作るわよ、夕飯!」 対する上条の返事は 「へ?」 間抜けなものだった。 「はー、腹減った・・・・・・」 上条当麻はスーパーの袋を片手にもう何度目になるか分からない呟きを洩らした。 夕食を作ると言った美琴だが、上条の家の冷蔵庫に何もないのを確認して買い物を頼んだ。 お腹空いてるんでむりですといったら問答無用で電撃が飛んできたので音速にも勝るような速度で土下座をして家を転がり出たのだ。 「・・・・・・あと少しなんだから我慢したら?」 家を出てきたときについてきて隣を歩いているのは美詠だ。 先ほどから同じ事ばかりつぶやいている上条にそろそろ呆れている表情で ダラダラと歩く上条と歩調を合わせている。 「そんなことを言われましても家についても一時間ぐらいかかるだろ? 上条さんはもう限界が近いのでそんなに待てないのですよ」 育ち盛りの男子高校生なめんな!と胸を張る上条。 「・・・・・・はぁ、ホンッとにアイツそっくりね」 上条の態度に溜息をつく美詠。 だが、上条は気になる事があったのかキョトンとした顔になると 「ん?アイツって、誰だ?」 自分と似ている人物となると当瑠ぐらいしかいなのだが 上条にはそっくりの人物像がうまく浮かんでこなかった。 「な、なんでもない!さ、早く行きましょ」 美詠は何故か顔を真っ赤にして腕を振り回し始める その行動に「?」となる上条だったが 「まぁいいや・・・・・・」 そう言ってそれ以上追求をしようとはしなかった。 少しだけ沈黙する二人。 先ほどよりも少し速くなった歩調だがまた上条が口を開いた。 「・・・・・・そういやさ、疑問に思ってんだけど」 「・・・・・・何?」 「いや、美春の能力は説明されたけど、当瑠や美詠の能力は聞いてなかったなって思って」 出会ったときから聞きたかった事を聞く上条。 「・・・・・・知りたいの?」 「一応は」 ふぅん、と美詠は呟いたが、その後何もしゃべらずに周りを見回すだけで 話の続きをしようとしない。 「話してくんないの?」 「まぁ、いいんだけどね・・・・・・とと、信号赤か」 二人が通る目の前で信号が切り替わり、横断歩道前でピタリと止まる二人。 美詠の素振りは説明をしたくないと言うより、獲物を探すような顔つきだった。 「実際に見せたほうが分かりやすい能力なのか?」 「まぁね、演算の説明とかしても分かんないでしょ?」 「うっ――――!」 痛いところ突かれる上条。 常盤台と言っても年下の女の子に説明されるのは物凄く恥ずかしい上に 美詠の言うとおり物理演算とかベクトルの理論とかを大まかにで説明されても 理解できる気がしなかった。 「はぁ、じゃぁ、見せてくれよ」 「んー、でもなぁ・・・・・・」 「待ちなさい!!」 誰かの慌てたような声が迷っている美詠と上条の後ろでする。 何だと思って振り返ると美春と同じくらいの年の男の子が上条の隣を走りぬける瞬間だった。 「な!?」 信号は赤のままだ、そして一台の大型のトラックが少年に向かって走ってきている。 トラックは無人のAI操作のトラックなのか止まる気配はない。 距離がどの程度かは分からないがトラックはかなりの速度で少年との距離は詰めている。 「くそ!」 駆け出したのは上条だ。 走ってきた勢いのまま少年を突き飛ばす。 飛んだ距離は大した事ないがトラックの幅を考えれば十分に少年は無事になる。 あくまで少年だけだが。 トラックとの距離は人間の反応速度ではとても避けれないものとなっている。 (・・・・・・俺が死んだら当瑠たちはどうなるんだろうな) ふと、そんな事を思ったがトラックは上条を轢かず 突然不自然に傾き吹き飛んだ。 「・・・・・・!!」 何トンあるか分からないトラックは誰もいない歩道に吹き飛び ひしゃげた形でそこに鎮座した。 「私の能力ってさ、ちょろっと特殊なのよね」 息を呑み、トラックが吹き飛んだ方向とは逆のほうに顔を向ける。 「空力使い≪エアロハンド≫じゃないわよ」 上条の近くまで来て手を握り、立ちあがらす。 「能力名は『吸収構築』≪ドレイン≫、吸収したものを私のイメージした物質として作り直す能力 今のは空気中の風を吸収して固形の『砲弾』に再構築してぶっ放したのよ」 騒ぎを聞きつけて人が集まり始める。 警備員を呼ぶためか、吹っ飛んだトラックの状態を撮影するためか携帯を取り出している人もいるが それを気にすることなく美詠は話を続ける。 「私は未来の学園都市に四人しかいないレベル5≪超能力者≫その第三位」 そこで一度息を吸う。 「創造者≪クリエイター≫、そう呼ぶ人もいるわね」 どこかの誰かと同じ場所に君臨するその少女はニヤリと笑った。 「それで?警備員にアンタは捕まって、こんなに遅くなったと・・・・・・」 空はすっかり黒く染まった午後八時。 上条当麻は玄関口で仁王立ちしている御坂美琴にお説教を受けていた。 お説教とは言っても上条自身は何も悪くないし、むしろ人助けをして感謝される立場だ。 だが、現実は厳しい。 上条は警備員に犯罪者扱いされ、美詠にはいつの間にか逃げられていた。 そのせいで、説明をされ、一時間たってやっと解放されたのだった。 「外の警備員、内のビリビリ、不幸だ・・・・・・」 「ちょっと!何、溜息ついてんのよ!」 美琴の頭から青白い光が発生する。 上条はいつも通りの美琴の反応に本日二度目の音速土下座を発動させた。 「ちょ、ちょっと待て!電撃は勘弁してくれ!多分今の上条さんには貴方様の電撃に反応できません!」 「・・・・・・じゃぁ、今日は私がアンタに初めて勝つ記念日になるわね」 青白い光が更に強くなり、美琴の髪の毛が逆立ち上条の視界を照らす。 「あー!上条さんは早く御坂さんのご飯が食べたいです!」 空腹状態であることと、美琴が食事を作ってくれると言う話を思い出して 咄嗟に話題を変えようとわざと大声で言う。 「・・・・・・え?」 今にも爆発しそうだった美琴の青白い光が休息に止まっていき 逆立った髪の毛はパタリと倒れた。 「・・・・・・あ、アンタ、そんなに楽しみだったの?」 なんだか急に大人しくなってもじもじと指をからませる美琴。 端から見れば可愛らしい動きだ、しかし上条には命がかかっている これはチャンスだと思って一気に畳み掛けた。 「あ、あぁ!上条さんは御坂さんの作ってくれる食事が楽しみで楽しみで仕方ないんですよ いやー、一体どんな料理を作るのかな~、早く食べたいなぁ~」 「そ、そう・・・・・・そっか・・・・・・じゃ、じゃぁ作るから、あの子達と待ってて」 フラフラとしながら狭い学生寮のキッチンに美琴は入っていった。 (た、助かった・・・・・・?) 安心と疲れでしばらくはそこから動けなかった。 「~~~♪」 キッチンから美琴の鼻歌が聞こえてくる。 常盤台は中学卒業後には社会に適応できる人材を作るのを目標としている その為、能力開発だけでなく学習のレベルも大学生クラスの内容となっているので 社会人になって一人暮らしをする生徒たちは料理を学ぶ調理実習をするだろう。 (その実習内容が庶民的な料理であるかは謎だが) 食事が寮の食堂で取れるお嬢様学校とはいっても、それ以前に女子校である常盤台で料理が出来そうないのは 天然の箱入り娘くらいではないか?そう考えた上条だが。 (・・・・・・普段から作らないから怖いんだよなぁ) 要は経験値が貯まっているかどうかだった。 授業で習ったことを一人で実践に移すにはそれなりの積み重ねが必要だし 今はそれなりに料理が出来る上条自身も料理を作り始めたときは失敗の連続で 食材を無駄にしてゲテモノを作ってしまったこともあった。 つまり上条が言いたいのは。 (レベル一のまま装備も整えずダンジョンに入るのと同じなんだよな) ゲームに置き換えればそういうことである。 ちょっぴり自分が無事に生き残れるか心配になった上条だった。 「パパーどうしたの?げんきがないよ?」 「ん?」 考え事をしているといつの間に上条の懐に入り込んだのか美春が顔色を伺っていた。 「ちょっと考え事してただけだ」 そう言って、頭を撫でてやると美春は嬉しそうに笑って満足げにしている。 「美春は機嫌がいいな、いい事でもあったのか?」 「ママのつくったごはんたべるのひさしぶりだもん!」 わーい、と美春が両手を挙げて喜びを表現する しかし、そこでふと疑問が浮かんだ。 「久しぶりって・・・・・・御坂の奴何してんだ?育児放棄かよ」 多少不穏な未来を浮かべてしまう上条。 「違う違う、親父の仕事手伝ってんだよ」 美詠とテレビを見ていた当瑠が振り返って言う。 「手伝いって・・・・・・未来の俺一体どんな仕事してんだ? つか御坂と同じ仕事してんのかよ?」 卒業してエリート街道を突っ走る常盤台のお嬢様と 赤点量産で落ちこぼれの不良学生が同じ職場とはどういう事だ思うが そういうこともあるだろうとあまり深く考えない事にした。 「・・・・・・まぁね、職場の話はしないけど、飯のほうは美詠が時々つくってくれるし」 何の気なしに当瑠が言うが、隣でお茶を飲んでいた美詠がブーッ!とお茶を噴出した。 もちろん、当瑠に向かってだが。 「なにすんだテメェ!」 顔がびちゃびちゃになり怒りを露にする当瑠。 「ア、アンタが変な事言うからでしょうが!」 「何が変なんだよ!アホかお前は!」 ぎゃぁぎゃぁと叫びあいながら喧嘩をする二人。 「美詠は常盤台の学生なんだろ?寮生なのに大変じゃないのか?」 上条に疑問をぶつけられて、取っ組み合いになりかけた二人の手が止まる。 「・・・・・・ま、まぁ、毎日って訳じゃないし、その・・・・・・将来の勉強にもなるかなって」 美詠は顔を赤くしながらもじもじとし始める。 視線は泳いでいて、時々チラチラと当瑠の方を見ているのだが 上条と当瑠はそれに気づかない。 「将来って、お前もう結婚する相手でも決まってんのかよ」 上条は多少呆れた表情で美詠に問いかける。 「け、結婚!!?そんな事あるわけないじゃない!!」 「い、いやそんなに必死に言われましても困ってしまうのでせうが それに、お前ら兄妹なんだから別に寮生のお前が当瑠と美春に飯作るのなんて不自然じゃないだろ」 美詠がそこで、うぅと呻いて下を向いてしまった。 そしてそのまま何もしゃべらなくなったのだが、その沈黙を 「おーい、あんた等、ご飯できたわよ~」 実際に夕食を作っていた美琴によって破られた。 「どうよ!これが私の実力よ!」 ふふん、と自信満々にどうだ!と言う顔をする美琴。 上条はそれを見て苦笑していたが、盛り付けられた料理を見て驚愕した。 別に料理が特殊と言うわけではない、作られた料理は一般的な家庭でも見られる 大根おろしと和風ベースのソース仕立ての和風ハンバーグなのだが 出来立て感があるジュージューと言う音を立てているし、サイドに盛り付けられている ポテトサラダやそのほかの野菜、そしてついでに作られているコーンスープが 上条の空腹を更に刺激しているようで美琴の言葉も無視して料理を食べ始めた。 「・・・・・・ちょっと、聞いてるの?」 いただきますも言わずに食べ始めた上条に怒るが 「・・・・・・うまい」 「へ・・・・・・?」 「御坂・・・・・・これすげぇうまいぞ!! 上条さんは少しは料理が出来るつもりだったけど なんか自分の自信を壊されるくらい感動した・・・・・・!」 いつの間に食いしん坊キャラになったのか上条の皿にはもう夕食はなくなっていた。 「え?そんなに?うそ?」 疑問符しか出てこないが、美琴は素直に喜ぶ上条の姿が嬉しかった。 「あぁ、本当だ!」 「そ、そう・・・・・・ありがと・・・・・・」 美琴は上条が本心で言ってくれて作った甲斐があったと思う一方で 段々と気恥ずかしさがこみ上げてきた。 「その、子供たちも見てるから・・・・・・恥ずかしいんだけど」 「あ、わ、わりい」 上条もそう言われて冷静になり、美琴の方から視線を逸らす。 美琴もその視線を追ってみると、ニヤニヤ笑う三人組がいた。 「いやー、お暑いですなー、手料理一つでここまで褒めちぎるとは」 「い、いや、それは、その・・・・・・あまりの驚きで我を失っていたと言うか」 「でも、美味しかったんでしょ?」 「ま、まぁ・・・・・・」 「もっとたべたいよね、パパ」 「食べたいです!食べたいですから!もう私めをいじめないでー」 上条だけを苛め抜く三人組。 (未来の私たちも、こんな感じなのかなぁ) クスクスと若干苦笑い気味に笑う美琴、ただ未来の自分と上条を想像して 頭を何度も振って冷静さを取り戻そうとしたが、なかなか想像は頭から離れてくれなかった。 そして、上条がこの口撃の最中、一つの決心をしたことにも気づかなかった。 御坂美琴と上条当麻は常盤台の寮へ続く道を肩を並べて歩いていた。 食事を終えた後、時刻は夜の十時を回っていたが、泊まるわけにもいかず (上条の部屋にはあの三人組が泊まることになったので狭くなりすぎた) 一人で帰るといったら上条が送っていくと断っても譲らなかったので 好意に甘えさせてもらったのだ。 「な、なぁ、御坂」 「何?」 上条が美琴の方を見ずに話しかけてくる、声から少し緊張しているのは分かった。 「その、明日さ・・・・・・お前暇か?」 顔の方はあさっての方向を向いたままだ。 「え?・・・・・・ま、まぁ特に何も用事はないけど?」 答えている美琴の方も緊張が伝わってきてしまい なんとも言えない微妙な空気が二人を包んでいる。 「そっか・・・・・・じゃぁ、あのさ・・・」 まだ言うか言わないか迷っているのか上条の途切れ途切れとなっている。 「明日俺と、どっか、い、いかないか?」 「はぃ・・・・・・!?」 落ち着けと美琴は一度深呼吸する。 「そ、そうね!あの子達も過去の学園都市で遊んでみたいだろうし! 五人でどこか出かけるってのもいいわね」 「あ、あいつらは関係ねぇよ!」 「う、うぇ・・・・・・?」 上条が怒ったような声を上げる。 美琴は何故上条がそんな声を出したのか分からずに訳が分からないと表情でだしてしまった。 「あぁ、でかい声だして悪い、つまりだな、俺が言いたいのは・・・・・・その、あいつらと一緒じゃなくてだな」 「??」 ・・・・・・二人きりでどこか行こうと上条は誘ってきている。 そこまで考えがまとまったところで上条がえぇい!と意を決した声を上げた。 「御坂!!」 あさっての方向を向いていた上条の顔が急に美琴のほうを向き 美琴の両肩に手を置いて体ごと上条の方に向けさせられた。 「ふぁ!ふぁい!!?」 突然の行動に変な変な返事をしたが上条は気にせずに力強い目で言葉を繋げた。 「俺と二人っきりで明日、デートしてくれ!!」 普段の上条の口から出ないようなとんでもない言葉が出てきた。 (え?デートって言った?この鈍感男が?あっはっはー、ないない聞き間違いよね) いつもの上条なら美琴と一緒に外に出かけていても デートとは言わず、引っ張られて色んな場所を回らされている、位にしか思わないはずだ。 しかし、確かに上条はデートと言った、美琴を当然のようにスルーしてきた男がいきなり積極的になった事に 美琴の思考はどんどん冷静さを失っていく。 「ア、アア、アアア、アアアア、アンタががが、わた、わたしと、デデ、デートしたいって?」 噛み噛みで言葉を何とか搾り出す。 「あ、あぁ、お前と二人だけで、えぇっと、遊びに行きたいなぁ、なんて・・・・・・」 上条は妙なダンスでも踊るように体全体を動かして 言葉だけで伝わることをかなり手間をとって説明する。 「・・・・・・い、嫌か?」 上条が心配そうな顔をして美琴の表情を覗き込んでくる。 「・・・・・・嫌じゃない」 その言葉を聞くと心配そうだった表情が明るくなる。 「ほ、ホントか?よ、良かった、断られるんじゃないかと思った」 「こ、断るわけないじゃない!」 好きな人から誘われて、とは流石に繋げられなかったが 美琴は少しだけ素直に返事をすることが出来た自分にも喜ぶ。 そうこうしているうちに常盤台の寮が目前となってきていた。 寮の部屋に戻るのは安心できるが、美琴は寂しさも同時に感じていた。 「も、もう、大丈夫だな・・・・・・じゃぁ、俺は行くから」 行って欲しくない、と美琴は思う。 もう少しだけ一緒にいたい、とも。 「お・・・・・・おい・・・・・・どうした?」 美琴は上条の腕を掴んでいた。 離れていって欲しくなかったからだ、もっと一緒にいたいと思ったから 体が勝手に動いて無意識に上条の腕を掴んだ。 そして、そのまま上条の体を引っ張って、上条の胸に飛び込んだ。 「お、おい!!御坂!!?」 あからさまに困惑する上条。 いきなり引っ張られたのもそうだが、中学生とはいえお年頃の女の子に抱きつかれたとなれば 男性ならば少しは焦ってしまうだろう。 「た、楽しみにしてるから」 「は、はぃ!?」 「あ、明日のこと楽しみにしてるから私をがっかりさせんじゃないわよ!馬鹿!」 「え・・・・・・あ、はぁ、その、なんと言うか、あ、あんまり期待されると逆に緊張してしまうのですが」 美琴はそこで、ぎゅぅっと更に力強く上条を抱きしめた。 体が更に密着するので美琴の柔らかい部分の感触が上条の体に伝わっていく。 「!!みさ、御坂さん!!?あの、あた、あたって!!?」 「・・・・・・」 美琴は離れない。 上条がしっかりと約束するまで離す気は無かった。 「ちょっとーー!?聞いてるんでせうか!?上条さん的には嬉しいんですが! いや、でもちょっとそろそろ離して欲しいと言うか、私めの理性が!崩壊するうううううう! 訳の分からないことを言っているが、上条は無理やり引き剥がそうともしない。 美琴は反応が面白くなって強く抱きしめたまま体を少し動かした。 当然、上条の体には当たっているものが動くのでさらに緊張たように体を固める。 「―――――――――!!!?あああああああああああ!分かった分かりました! 私上条当麻は、あした御坂美琴を必ず楽しませますのでもう離してくださいお願いします!」 「本当?」 「本当です!」 そこで美琴はようやく体を上条から離す。 上条の緊張は一気に解けたのか、呼吸がかなり荒く、腕をだらんとさせていた。 「じゃ、じゃあね、また明日」 「お、おう・・・・・・じゃあな」 上条と別れて常盤台へと向かう足取りは軽かった。 (アイツが誘ってくれた、初めてのアイツとのデート・・・・・・) 嬉しくて嬉しくて寮の部屋に着いて、ルームメイトに怪訝な顔をされても何も気にならなかった、 その夜はお気に入りの寝巻きを着ても、ぬいぐるみを抱きしめても なかなか寝付くことが出来なかった。 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある未来の・・・
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前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/どこにでもあるハッピーエンド 好き 学園都市を襲った魔術師に上条当麻と御坂美琴が共同戦線を張って立ち向かった事件。 その結果美琴が入院し、上条が自分の中にある美琴の存在とその大切さを確認するきっかけともなった事件。 その事件が解決してからの三ヶ月。それは二人の仲を近づけるためにあったような三ヶ月だった。 その三ヶ月のおかげで、今では週末のデートや美琴による上条の家庭教師が当然のように行われており、端から見れば二人は完全に恋人同士のようにまでなっていた。 しかし実際のところは、二人は互いに告白もしていないし、デートの時もキスどころかまともに手すら握っていないのが現実で、本人達の認識としてはあくまでも友達以上恋人未満であった。 なぜそのような歪な現象が起きているのか。 原因としてはいろいろあるのだが、大きなものとしては二つある。 一つは上条が決定的にニブい事。 「フラグ男」などと不名誉なあだ名で呼ばれて女性とのフラグを数多く立てたりはするものの、当の本人は恋愛ごとにひどくウブである。他人の気持ちどころか自分の心ですらよくわかっていない。 それでも、美琴のことを誰よりも大切にしたい、というところまではようやく自覚できたのだが、なぜかそれが好きという感情にまで到達せず、なかなか認識の進化が進まないのだ。 もう一つは素直になれない美琴の性格。 上条のことが好きで好きでたまらなく、その度合いは「自分だけの現実」を破壊するほどにまで達しているにもかかわらず、素直にその想いを表に出せない。 かなりいい線にまで状況を持っていっても、結局その性格のせいで最終的には状況を破壊してしまう。 これでは上条に想いが届くわけもない。 そんなわけで二人の仲は肝心なところまではなかなか進展しないのである。 しかしそれでも刻は流れていく。 ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。 少年も少女も成長していく。心も体も大人になっていく、変わっていく。 人間同士の関係も、本人達の望む望まざるに関わらず、良くも悪くもあるべき姿に向かって行くものなのだ。 そしてその刻は、とうとう訪れようとしていた。 「あー、もうどうすればいいのよ」 学校から帰ってきた美琴は自室のベッドにだらしなく寝そべると、誰に聞かせるともなく呟いた。 最近の彼女の癖である。なかなか進展しない上条との関係を嘆いているのだ。 御坂美琴は夢見ている。 上条当麻と付き合いたい、恋人になりたい。上条当麻と結婚したい。そして、そして――。 色々と妄想は尽きない。 そのためには今の自分たちの置かれている状況を変えないといけない。だから美琴はそのための努力をしている。 一日一度は上条との接点を持とうと下校途中の彼を待ち伏せたり、会えない日でも電話もしくはメールで必ず何らかの接点を持つようにしたり。 上条へ電撃を浴びせる頻度も一日一度までと決めたし、様々な言い訳を駆使して上条の住む寮へ訪問することもできるようになった。 美琴は吹寄制理と上条の勉強会の様子をデートと誤解したあの日から、「上条が振り向いてくれるのを待つ女」から「素直になり上条の想いを自分に向ける努力をする女」へと変化している。 結果として今も続く上条とのデートがあり、また上条の家庭教師をする美琴があるのだ。 だが今の美琴としてはそこまでが限界であった。 努力の結果一番仲が良い異性にはなれたが、それでも恋人ではない。 そんなやや馴れ合いのような状況を打破し、上条と正式な恋人になる手段。それがどうしてもわからない。 いやわからないのではない、今以上の頑張りができないのだ。 普通に告白してしまえば後はとんとん拍子に話は進む、美琴はそう初春や佐天からアドバイスを受けたことがある。 美琴の方から好きだと告白してしまえば、ややショック療法的ではあるものの、上条も美琴をそういった対象として考えざるをえなくなり、そうなれば上条も煮え切らない自分の想いを自覚できる。 上条本人すら自覚していない彼の本心を見抜いた上での極めて適切なアドバイスで、まず間違いなく成功するやり方だ。 岡目八目とはよく言ったもので、恋愛も端から見た方が状況がより良く理解できるのは今も昔も変わりないらしい。 しかしその事実に気づいていない美琴は、恋愛に対する臆病さから初春達の言う最後の一歩を踏み出す勇気がなかなか出せない。 もし万が一告白を断られ、それをきっかけに今の居心地のいい関係すら壊れてしまっては元も子もない、そう思い躊躇してしまうのだ。 壊れるくらいなら今の関係のままでもいいか、そんな弱い心が頭をもたげてしまう。 だからこそ美琴は考える、関係を壊すことなく上条を振り向かせるいい方法はないものか、と。 ここ最近の美琴の悩みは全てそれである。 「ていうか、どうしてあそこまでやったげてるのにアンタは告白してこないわけよ。私が一番大切だって言ってくれたくせに」 美琴は枕に顔を埋めたまま、心に浮かんだ上条の姿に悪態をつく。 実際には上条は初春達に言っただけで、当の美琴本人には告白をしていないのだからややお門違いな悪態ではあるのだが、そんなものは恋する乙女には関係ない。 好きな人に自分の思う通りに振る舞ってほしい、誰だって思うことだ。 けれどそんなことを思ったところで何かが変わるわけでもない。 結局思考は振り出しに戻ってしまう。 「もう、このままでいいのかな? アイツが一番大切にしてる女の子は私なんだし」 振り出しに戻り、更には弱い心で安定しようとしてしまう。 「でもさ」 美琴は上条の女性関係を頭に巡らせる。 インデックス、二重まぶたの巨乳、やたら露出度の高い侍、巫女、妙なしっぽを生やしたイギリス人、巨乳金髪シスター――。 びきっとこめかみに青筋が立ったところで思考を止めた。 ダメだ。 確実に上条に強い好意を持つであろう人物を数えるだけでも両手で足りない。しかもインデックスを除けば確実に自分よりスタイルが女らしい女性ばかり。 年上の巨乳好きだと公言する上条のこと、今あんなことを言っていてもいつ彼が心変わりするかわかったものではない。 なぜなら自分は上条の「恋人」ではないのだから。 それに自分がいるから遠慮してくれてはいるものの、初春や佐天が上条に対し好印象を持っていることも知っている。 上条のことだからこれからだってどんどんそんな女の子を増やしていくだろう。 やはり上条と恋人になりたい、自分だけが上条の「特別」になりたい、美琴はそう強く願った。 むん、と両拳を握って気合いを入れた美琴はばっとベッドから飛び降りた。そしてドレッサーを開け鏡で自分の容姿をチェックしていく。 「顔は……うん、かわいい! アイツだって私の笑顔は最高だって言ってくれたし」 美琴は鏡に映る自分にウインクする。次に腰に手を当てた。 「腰なんかも細くていい感じだし、手も脚もすらっとしてる。お尻は……小さいけど形はいいわよね。結構いいんじゃない、私? あ、でも」 美琴はじっと自分の胸を見た。 「お母さんはあんなに大きいのに、どうしてわたしの胸、ちっちゃいんだろう……」 美琴はぺたぺたと胸を触りながら盛大なため息をついた。 「アイツ、大きな胸の方がいいって言ってたよね……大きくならないかな、私の胸」 「いーえ、お姉様はその慎ましい胸が似合っているのです。黒子のこの小さな手でもすっぽりと包めるナイムネ具合。素晴らしい! モデル体型のお姉様はそのままでいいのです。そのままのお姉様が至高の品なのです!」 「そう言いながら何アンタは人の胸揉んでるのよ」 「いえいえ、お気になさらずに。お姉様がどうしてもお胸を大きくしたいとお思いなのでしたら黒子が揉んで差し上げようと思いまし――へぶしっ!」 いつのまに帰ってきたのかテレポートで自分の背後に立ち胸を揉み始めた黒子の頭に、美琴は肘打ちをたたき込んだ。 「いらんことすんな! ちょっと、アンタいい加減に離れなさい!」 だがこんな程度でセクハラを止めるようならそれは白井黒子ではない。まがい物、タレ目でツインテールがポニーテールになっているようなニセ白井黒子だ。 もちろん本物であるこの白井はしつこく美琴に食い下がっていく。 「何を照れていらっしゃるんですの? お姉様はそのお体をさらに女性らしくしたいんですわよね? ならばこの黒子の愛のマッサージをお受けになってくださいまし」 「やめんか、この馬鹿!」 結局今日の美琴の思案は黒子の乱入により途中で終わることになった。 ――やっぱり、もうちょっと頑張ってみよう! どんなにかわいい女の子が相手だって私は負けない! アイツの彼女になるのは絶対、絶対、私なんだから! 数日が過ぎ、金曜日の放課後。買い物帰りの上条を捕まえた美琴は明日の予定を上条と相談していた。 予定、もちろん退院以降恒例になっているデートの予定である。 もっともこの期に及んで、未だに美琴も上条もこの手の話をする際に「デート」ではなく「遊びに行く」という言い方を使っており、こういうところにも親密になりきれない二人の心の距離がよく表されている。 「なあ御坂、何度も言うようだけどお前、最近ちゃんと友達付き合いはしてるのか? 俺なんかにばっか構ってないで自分の付き合いもちゃんと大事にしろよ」 「わかってるわよ、そんなこと。私は私でちゃんと考えてるの、別に友達をないがしろにしてるわけじゃないわ。アンタにはわからない女の付き合いってのがあるのよ」 「そんなもんか」 「そういうこと。ところでね、明日のことなんだけど」 明日のデートに思いを馳せ、美琴は半ば無意識で笑顔を浮かべながら上条を見た。 穏やかな風が吹き、美琴の柔らかい髪がふぁさと風にそよいだ。 「あれ?」 その笑顔を見た瞬間、上条はなんとも言えない違和感を覚えた。 いつもの美琴。 出会った当初はともかく、最近はしばしば見せてくれるようになった柔らかい表情の彼女。 そのはずである。 だが何かが違う。 上条は訝しげな視線を向けたままぽつりと呟いた。 「なんか妙だな」 「な、み、妙って何が?」 戸惑う美琴だが上条はそれを無視して美琴の全身をくまなく観察していく。 「ちょっと、恥ずかしいじゃない」 照れた美琴は体を隠すようにするが上条はお構いなし。不思議そうに首を傾げた。 「なあ、御坂。お前、なんっか、いつもと違わないか?」 「え、そ、そう?」 慌てて美琴はコンパクトを取り出し自分の顔や髪型をチェックする。 けれどどこも変わったところはない。体調だって健康そのもの、病気で顔色が悪いなどということもない。 「大丈夫なはずだけど。何が気になるの?」 「上手く言えないんだけど、なんかオーラが違うっつーか、雰囲気が違うっつーか」 「雰囲気って言われても……あ」 「どうした?」 「ううん、なんでもない」 美琴はようやく思い当たる節に気づいた。今日は朝シャワーを浴びる際、間違えて白井のシャンプーを使っていたのだ。 普段なら間違うはずもないのだが、今朝は寝ぼけた白井にシャワールームを強襲されそのドタバタの最中に間違えたのだ。 だがそれも朝の話、放課後の今までシャンプーの香りが続くとも思えない。 「違うのは……香り?」 「…………!」 だが美琴の考えは間違っていた。 上条は当の美琴本人が気づかない程度でしかない、わずかなシャンプーの香りの違いに気づいていた。 それはすなわち上条がそれだけ美琴のことを気にしている、ということに他ならない。 その事実に気づいた美琴の顔は徐々に朱くなっていった。 だが上条は美琴のその変化を別の意味に捕らえると、顔をさっとこわばらせて慌てて弁解を始めた。 「いや、あのその、ご、誤解すんなよ! 上条さんは別にお前の香りをいつも気にしたり嗅いだりしてる変態さんじゃないんだぞ! たまたま今日は気になっただけで、な! だからそんなに顔を真っ赤にしないで、泣きそうな顔にならないで、ビリビリしないでくれ――!!」 「ふにゃぁー」 例によって例のごとく漏電する美琴。 結局二人ともとても話ができる状態でなくなり、相談の続きは夜メールで、ということになってしまった。 その夜。上条は夕飯の準備をしていた。 今日のメニューは賞味期限ギリギリのため捨て値で売られていた具材を大量に使った焼き飯だ。調理もお手軽でお腹もふくれて経済的。 普段の上条なら自らの倹約家ぶりを自画自賛しながら調理しているところだが、今日の上条は夕方のことが気になって料理にまったく集中できていない。その調理のあまりの手際の悪さに抗議するインデックスの声もほとんど耳に入らないくらいだ。 「さすがにまずかったな。嫌われてなきゃいいけど……」 上条は夕方の出来事を思い出しながら失敗したな、と考えていた。 なにしろ親しいとはいえ歳頃の女の子の香りを気にしていたなんて変態の極みではないか。 しかも相手は中学生の美琴。軽蔑されても文句は言えない。少なくとも上条はそう思っていた。 実際はその相手と自分との距離に応じて相手の抱く印象はがらっと変わるのだが、上条がそこに気づけるはずもない。 大きくため息をついた上条だったがここでふと疑問に思った。 なぜ自分は美琴の香りが気になったのだろうか。 美琴の様子から考えるに、つける香水か何かが違って、とにかく今日の美琴は普段と違う香りを身に纏っていたのは確かなようだった。つまり自分の嗅覚は確かだったということになる。 だが今までの自分なら美琴のそんな変化に気づくはずもないのだ。 なぜ今日に限って美琴のそんな些細な変化に気づいたのか。 上条は必死で考えた。何か重要なことがわかりそうな、そんな気がしたのだ。 しかし。 「だあー! やっぱりわけわかんねえ――!!」 やはりそこは上条。それだけ美琴のことが気になっている、という単純な答えがさっぱり出てこず頭を抱えることになる。 フライパンの上で焦げかけになっている焼き飯を泣きそうな顔で見つめるインデックスの心配をよそに、上条の苦悩は続いた。 一方、その頃美琴の方はというと、こちらも上条に負けず劣らず頭を抱えていた。 夕食後、入浴することもなく机に突っ伏したまま悩み続けていた。 その深刻な様子に同居人である白井黒子が何度か声をかけたのだが、まったく気がつく様子もない。 「どういうつもりよアイツったら……今までこんなことなんてなかったのに。これってやっぱりああいうことって考えていいのかしら? でもでも、こんな風に期待したってアイツのことだからあっさり裏切るのはわかりきってるし」 しかし行動が同じようであってもその悩みの内容は違う。 上条と違う所は美琴自身が上条の行為が持つ意味をわかっているということ。 それだけにその意味に期待したいという想いと、期待して裏切られるのを怖がる想いがあり、その狭間で悩んでいる、ということだ。 事実、美琴は今まで上条の鈍感さに何度も期待を外されている。 家に呼んでもらったって宿題を手伝わされる以上のことはないし、名前を呼んでもらえたときだってそれは側に妹達や母、美鈴がいたから彼女達との区別のためであった。 自分の飲みかけのスポーツドリンクを飲んだってその意味に気づきもしないし、自分といっしょにいるときでさえ美人、美少女とのフラグを立てまくる。 他にもいろいろあったがとにかく、上条はその鈍感さによって何度も美琴の期待を裏切っているのだ。 これでは上条に期待できないという美琴の気持ちもわかるというものだ。 しかし、今回はなんとなくだがいつもと違うような、そんな気がするのだ。 「私の香りの違いに気づく……まったくの偶然か、本当に私を意識してくれてるか、どっちかしかない、よね。偶然か、必然か……期待していい、のかな。ううん、今度こそ、期待、したい……!」 小さくうなずいた美琴は机の引き出しを開けた。そこに入っていたのはブランド物のヘアピン。 今つけている花のヘアピンよりも遥かに大人っぽい、少女趣味の美琴の好みとはおよそかけ離れた物だ。 もちろんこれは美琴自身が自主的に選んで買った物ではない。美鈴から誕生日のプレゼントとして贈られた物。 自分の趣味とは合わないため、一度も使ったことのないそのヘアピンを美琴はそっと胸に抱きしめた。 「もし、アイツが気づいたのが」 美琴は静かな決意を胸に秘めながら目を閉じた。 「もし、気づいたのが必然なら、私は――」 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/どこにでもあるハッピーエンド
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全国一斉上琴テスト はーい! 用紙は後ろの席の人に回してくださいねー!まだ表側を捲っちゃダメですよー。テスト開始はチャイムが鳴ったらですからね。えー、今回のテストは、直接成績に響くことはありません。あくまでも 「上琴」 がどこまで世に浸透しているか、その調査のためなのです。ですが、あまりに点数が悪かった人には補習が待ってますので注意してくださいね。はいはい、ブーブー言わない。それではチャイムも鳴ったところで、テスト開始!なのです。Ⅰ 基本Ⅰ‐① 上琴とはなんですか? (5点)佐天ちゃんの回答 「二人がいちゃいちゃしてることですね!」はい、その通りですね。海原ちゃんの回答 「御坂美琴さんと上条当麻さんによる…ゴフッ! カップリングの名称ですね。 二次創作の世界でも人気のカップ…ガハッ! リングであり、 とりわけ、溝口ケージ氏の『いちゃいちゃレールガン』…グバッ! シリーズや、 七積ろんち氏の…ブフォッ! 『御坂美琴の失恋』などが有名です。…ボグファ!!!」ステマ込みの完璧な回答…なのですが、血を吐くほど辛いのなら無回答でもよかったのですよ?初春ちゃんの回答 「上イン、通行止め、浜滝、数テレ(木原数多×テレスティーナ)と人気を五分する有名なカプですね。 ちなみに私のオススメは土上なんですが、最近は上一もアリかなって思ってます。 (ただし上条さんはヘタレ攻め限定)」腐女子【ホモ好き】は帰りやがれなのです……いやちょっと待って!? 数テレって何ですかその斬新すぎるカップリング!?Ⅰ‐② 上琴病とはなんですか? (5点)ミサカちゃん(Sサイズ)の回答 「あの人とお姉様のカップリングを愛するあまり、パーソナルリアリティに影響が出ること! ってミサカはミサカはニコニコ大百科で得た知識をひけらかしてみる!」はい、正解です。冥土帰し先生の回答 「恋の病というヤツだね? こればっかりは医者でも治せないね?」不治の病、ということですね。木原(数)先生の回答 「要はアレだろ? ガキ共が乳繰り合ってんのを見て喜ぶ変態って意味だよなぁ!!」う、う~ん……まぁ、そうと言えなくも…いやでも……う~ん……… Ⅰ‐③ 上条ちゃんの口癖は? (2点)土御門(元)ちゃんの回答 「その幻想をぶち殺すぜい!」自分の口癖もうつっちゃってますが…まぁ正解ですね。垣根ちゃんの回答 「俺の『幻想殺し』に、その異能は通用しねえ」……ちょっと自分の口癖がうつりすぎちゃってますね。一方通行ちゃんの回答 「『まずはそのふざけた幻想をぶち殺す』『不幸だァァァ』『心に、じゃないですか』『自分のためだろ』 『それでも、お前があいつの友達だってのには変わりないだろ』 『アイツがこれからもずっと悪くあり続けなきゃいけないなんてルールは ――― 』」 (長いので以下割愛)何か怖い! 何でそんなに上条ちゃんに詳しいんですか! どんだけファンなんですか!!Ⅰ‐④ 御坂ちゃんの好きなモノは? (2点)ミサカちゃん(Mサイズ)の回答 「ゲコ太というカエルのキャラクターです、とミサカは回答します」正解です。ちなみに、パチ商品の「どっせいゲコ太郎」には要注意なのですよ。木原(円)ちゃんの回答 「うん、うん。分かってるよ涙子ちゃん。ここは『上条さん』って答えるのが本当の正解なんだよね」確かにそれは模範解答ですが……カンニングはしちゃいけないのですよ………白井ちゃんの回答 「ワタクシ!!!」寝言は寝てから言いましょう。Ⅰ‐⑤ 二人のニヤニヤエピソードを3つ答えてください。 (各2点)雲川(芹)ちゃんの回答 「偽デート、フォークダンス、罰ゲームだけど。 ちなみに、情報源についでは企業秘密だけど」雲川ちゃんはミステリアスなのです。五和ちゃんの回答 「おしぼりを渡しました。お料理も作りました。 い、一緒にレジャーお風呂にも行ったことあるんですから!!」それは、あなたと上条ちゃんのエピソードじゃ……オリアナさんの回答 「街中や川原、それから橋の上でも激しくしちゃったんでしょ? まぁ、他の人の視線があった方が興奮するものね。お姉さんも嫌いじゃないわ」いやいやいや!! あ、あなたが言うと全く違う意味になっちゃいますから!!!/// Ⅱ 歴史Ⅱ‐① 二人が出会ったきっかけを答えてください。 (3点)浜面ちゃんの回答 「大将のことだから、彼女が誰かに襲われてるのを助けたってとこじゃねーの?」ちょっと違いますが…おまけで ○ にしておきましょう。ミサカちゃん(Lサイズ)の回答 「ナンパでもされたんじゃない?」上条ちゃんの性格からして、それはないのですよ。吹寄ちゃんの回答 「上条のいつもの手口ですね!」手口……う~ん、まぁ……Ⅱ‐② 上条ちゃんが入院している時、御坂ちゃんは手作りの何をプレゼントしようとしたでしょう? (3点)姫神ちゃんの回答 「お弁当。手作りと言えば。やっぱりこれ」惜しい! 惜しいですよ~。オルソラちゃんの回答 「その幻想を、お殺しになるのでございます」……それは4問前の回答なのです………マリアンちゃんの回答 「生きてるテーブル」怖えぇよ!!!Ⅱ‐③ 8月31日に二人が食べたのは、2000円の何でしょう? (3点)シスターちゃんの回答 「ジャンボ地獄チャーハンかも!!」それは結局食べてないのですよ。麦野ちゃんの回答 「シャケ弁」…自分が今、食べたいモノではなくてですね……フレンダちゃんの回答 「結局サバ缶が最強って訳よ!」いや…だから………Ⅱ‐④ 大覇星祭の借り物競争で、御坂ちゃんが引いた指令書には何と書かれていたでしょう? (3点)土御門(舞)ちゃんの回答 「第一種目で競技を行った高等学生だぞー」その通りですね。正解なのです。神裂ちゃん(さん?)の回答 「恩…でしょうか」…確かにそれは返さなくちゃいけないモノですが……それが紙に書かれていても困りますよね……オーレイさんの回答 「お金。利子は勿論、十日で一割ね」爽やかな学園行事で、何ちゅうモン貸し借りさせようとしてんですか。Ⅱ‐⑤ 御坂ちゃんがハワイで買った物は、キューピッドアロー社製の何でしょう? (3点)黒夜ちゃんの回答 「あぁ~何だっけ!? ここまで出掛かってんだけど……なんとかリング……イカリングだっけ!?」そんなモン、近所のスーパーで買ってください。ウィリアムさんの回答 「学生の身分でエンゲージリングなど気が早いにも程があるである。 最近の若者は早熟と言われているであるが、そもそも性の乱れが ――― 」 (長いので以下割愛)堅い堅い!! 正論ではありますが正解ではないですよ! あと、エンゲージリングでもないですからね!?ショチトルちゃんの回答 「原典」買えるの!!?Ⅱ‐⑥ 0930事件を、「罰ゲーム」、「ツーショット」、「ゲコ太」の3つのキーワードを使って説明してください。 (5点)雲川(鞠)ちゃんの回答 「罰ゲームの名目で、上条当麻をデートに誘った御坂美琴。 カップル限定のゲコ太ストラップを入手するために、ツーショット写真を撮ることにも成功した。 自分のプライドを傷つけずに目的を達成する、見事な作戦と言えるな」大正解なのです! 雲川ちゃんもお見事ですよー。ヴェントちゃんの回答 「上条当麻殺害の名目で、学園都市に乗り込んだ私。 学園都市を制圧するために、敵意で満たし天罰術式も成功した。 最終的にはローマ正教と学園都市を対立させ第三次世界大戦のきっかけを作った、 見事な作戦と言えるわね」…それ、ガチな方の0930事件じゃないですか………キーワード1つも使ってないし………削板ちゃんの回答 「男は最後の力を振り絞り、気合と根性のツーショット弾を炸裂させ、 見事、怪物ゲコ太郎を粉砕したのだった!! ゲコ太郎 『バ…バカな……この俺が…貴様ごときに……ぐふっ………』 男 『あばよ…あの世で罰ゲームでも受けるんだな……』」………もう、回答が異次元すぎて、どうツッコめばいいかも分からないのですよ……… Ⅲ 創作 次の二人の会話にセリフを入れて、台本形式のSSを完成させてください。 (30点)上条 「おーい美琴! ちょっとこの後 ( A ) ?」美琴 「えっ…いいけど、珍しいわね。アンタが ( B ) なんて」上条 「まぁ、今日は ( C ) だからな! たまにはこんなこともありますよ」美琴 「じゃあ ( D ) してくるから、ちょっと待ってて」上条 「わざわざ ( E ) するのか?」美琴 「 ( F ) ! ( G ) なんだから!!」上条 「…… ( H ) 。 そのかわり ( I ) ?」美琴 「 ( J ) !?」上条 「 ( K ) 」絹旗ちゃんの回答 「A:超映画を観に行きませんか B:B級ホラーに興味持つ C:半額デー D:超制服に着替え E:そのために帰宅 F:そうですよ G:学生割ならさらにお安くなって超お得 H:仕方ないですね。超待っててあげます I:ジュース奢ってくれますか J:何でですか K:高校生は中学生より、割引額が超少ないのです」ちょっといちゃいちゃ度が少ないので、23点ってところですかね。泡浮ちゃんの回答 「A:乗馬でも如何ですか B:お誘いになられる C:とても良いお天気 D:お弁当を用意 E:御坂様が直々にお作り F:勿論ですわ G:折角のおデートですもの。女性は愛する殿方のためなら、どんな事でもしたくなるもの H:御坂様からそんなに想われているなんて、とても光栄ですね I:僕からも一言だけ宜しいですか J:何でしょう K:僕も御坂さんの事を愛しています」若干二人の設定に違和感は残りますが…いちゃいちゃいていたのでいいでしょう! 30点満点なのです!リドヴィアさんの回答 「A:十字教に入れてくれませんか B:科学という異教を捨てる覚悟ができたのですね。素晴らしいことです C:私は目が覚めましたので D:洗礼の準備をいたしましょう E:私などのために聖水を用意してくださるので? F:勿論ですので G:例え元異教徒であっても、哀れな子羊には変わりありません。神は全てにおいて平等ですので H:あぁ…生きていて良かった I:これで私も救われるのですね J:貴方も是非! K:十字教へ!」はい、0点です。 会話も繋がってないし。Ⅳ 考察Ⅳ‐① 二人が今一つうまくいかないのは何故でしょう? (15点)建宮さんの回答 「そりゃもう、上条当麻が鈍すぎるのが悪いのよ! ヤツには少し乙女心ってモンを勉強してほしいのよな!」まさしくその通り!木山先生の回答 「主に彼女の性格に問題があるのではないかな。まずはツン…ツン……ツンドラ?を治すべきだろうね」そうですね。 でもツンドラではないのですよ。フィアンマさんの回答 「全てこの世界が悪いのさ。だから俺様が救ってやるよ」いやいやいや!! また戦争ふっかける気ですか貴方はっ!!!Ⅳ‐② ではどうすれば二人の距離が縮まるか、考えてください。 (15点)テッラさんの回答 「ツンを下位に、デレを上位に」そうですね。御坂ちゃんが素直にならないとですね。木原(病)先生の回答 「諦めればいいのです」よくねーです。結標ちゃんの回答 「彼があと、5~6年若返ればいいと思う」それは結標ちゃんの願望なのです。女性がみんなショタ好きだと思ったら大間違いですよー?……ま、まぁ先生も若い子は嫌いではありませんが……… はい! 終~了~。最後に点数の高かった人の上位グループと、低かった人の下位グループを発表して終わろうと思います。高かった人は鼻高々に、低かった人はよ~く反省してくださいね。よろしいですか? まずはよく頑張りました!ベスト5です。 一位 一方通行 101点 (問Ⅰ‐③の回答が詳しく書かれていたため、特別に+1点) 二位 海原光貴 98点 (テスト中に吐血した量0.4ℓ) 三位 ミサカ10032号 95点 三位 ミサカ10033号 95点 三位 ミサカ10034号 95点 (以下、ミサカ20000号まで全員95点)やっぱり二人に近い人が高得点を出したみたいですね。それと海原ちゃんは、この後ちゃんと病院に行くのですよ?さてさてお次は、残念でした!ワースト5なのです。(下から数えて) 五位 削板軍覇 7点 一位 青髪ピアス 0点 (小萌の補習を受けたいので白紙) 一位 木原円周 0点 (カンニングが発覚したため) 一位 御坂美琴 0点 (一問目から 「ふにゃー」 したため白紙) 一位 上条当麻 0点 (ナチュラルに全問不正解)はい! というわけで、上琴テストはここまでなのですよ。みんなは何点取れましたか? 勿論100点ですよね!それでは! またいつかお会いしましょうなのです~。あ、それと上条ちゃんには大事な話があるので、後で職員室に来るように。 お ま け ヽ、 、 、 、 \ ヽ { ヽ、 \ ヽ ヽ ヽ 、 ‐- 、ヽ \ \ ヽヽ \\ヽ \\ `゙ ミ ヽ \ \ \ \ ヽ \ lヽ、 __>ミ \ ヽ ヽ ヽ ヽ ! ハヽ― = 二 \ \ l } |、 >--== ミ 、`ヽ ヽ、\ ! // / ト、_ ̄>三二 ミ、 ,、ゝ‐- 、 |r-、/ / | 二` ミ- _ ヽ/ - 、 ` ヽ / // }/ ―= ニ ― ニ .〉,ィ‐- 、__,〉 _,, 〉 ///-. 、. _ 優 ‐ '" ヽ三 _ /〈 弋エヽ ヽ /ィェュ}.|//// `゛ ' -. .,, 先 \ミ.二 _彡, -、} /´' } l`ヽ 〉 // .`ヽ す ヽ-=ニ__ '" { ヾ `ヽ ィ ヘ / 〉彡' / | る。 `メ‐ '' ~ ヽ、lイ } _,z孑于テミx、Yr'´ ./ | .ノ//ィ _ヽ! 弋二二二二{/ _ >'" |  ̄ ` ― l\  ̄  ̄  ̄ { > ''" | ̄ " ' ― _ _ | `> -- ‐ '"_ ― ''"´ ツ \ 二 二 二 二 / ン __ _ . . -‐''" ` ‐--.、 デ を. /´ 、 ~ ‐ _ ./\ `‐-、 レ 下 / 、 ヽ \ ヽ \ 〉 } 〉 を 位./ \ ヽ ヽ .〉{ l / ヽ、 上 に、' ∧ ̄ > ''‐._ ./ ヽ―‐''" \― !/ ∧ 位 l ∠二 _ ,.x-‐‐ 、 / ̄ \__\.| / ∧ に / | | } | | }/ / | \ /. \ >. /i /. 丶、 ,... ´ /. / | ハ / ! /. >  ̄ ̄/. /l/ >| / | iハ i / j/ハ /! < ち /. .イ / でうラ'ヘ`} ト ∧ l /厶イ´. ∨ | \ー―一 ょ ー‐ァ. { 厶イ ハ/ `ニ ノ. jノ. 八/. 'でうラヽ/. | \ っ /___ ∧ (|/ 〈 //. ー一'. j/! \ ̄ 何 と /. ハ ∧ \ / { / ̄ ̄\ / } 「 ̄ 言 ∠ 八 . \ / } j\ /. / ∧ハ| 分 っ 厶イ ーヘ ´/ノ. \_/. /イ } か て ノイ /i ハ { ∧丿 ん ん |/ | |\ , -‐=' 、 / な の x≦ハ| \ ー‐. / い か / ∨//| \ `7. .イ\ っ / ∨/j \ \ ; . .< '///\ ス / ∨′ \  ̄ '/////⌒ヽ、 / >x .、 \ {'/////////\
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前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 第11話 一方通行(3) 案ずるより産むがやすし。とはよく言ったもんだ。 私があれほど思い悩んだことは、斜め45度上だが ある意味解決した。 想像以上に理事長が辛辣な提案をしてきたのだが。 所長:実はね例の絶対能力者進化実験なんだが、理事長から 依頼があった。 妨害して中止に追い込んでほしいという依頼だ。 まあ予定通り失敗だね。思った通りだ。 美琴:それなら理事長が先方に話すのが筋なのでは? 所長:巻き込んだ製薬会社の手前、理事長が直接 話すわけにもいかないそうだ。 まあ・・それは建前で、君と一方通行の仲を裂くことが目的だろう。 で、御坂君ならどうする。 美琴:難しいですね。理事長通達でレベル5同士の交戦は 禁じられています。 せいぜいいやがらせくらいでしょうか。 どうぞこちらのUSBに記録されたデモ画面をごらんください。 所長:ははは・・こりゃ愉快だ。で準備は?どうせすべて整っているんだろう? 美琴:ええ、本日7月22日 21時開始します。 所長:御坂君、株売っていないよな? 美琴:私名義ではないですよ。 所長:はあ・・あんまり派手にやるなよ。最近君がFXで荒稼ぎしたことが理事会で 大騒ぎなんだからさ。君と食蜂が組むとさ世界経済を破壊しかねないからさ。 美琴:でも恒産なくして恒心なしですよね。 所長:孟子ね。まあそうだな。じゃ・・せいぜいいやがらせしてくれたまえ。 進捗は明日聞こう。それと実験は3日休みね。以上 SEE YOU AGAIN . ふ・・所長のりが良すぎなんだよね。 戦わずして勝つか さあ。武器を使わないJCの戦い、みせてあげるよ。兄貴。 まずは・・・と破壊か。 JST 21:00 22TH JULY 2009 ミッション開始 JST 22 00 22TH JULY 2009 ミッションすべて終了 21時 あらかじめ仕組んだとおり論理ボムがさく裂し、妹関連企業 は命脈を絶たれた。 PCは甘ったるい合成音声で戦況報告を続ける。 戦果は以下のとおりです。 妹達関連 20施設すべて破壊。 妹達関連企業本社 すべて破壊 妹達関連企業 従業員 20万人のPCすべて破壊 妹達関連企業 取引先・顧客全データ破壊 2億人分ネットに流出 妹達関連企業 従業員 20万人のスマホ・ガラケー破壊及びデータ流出 妹達関連企業 ほふり株式データ全破損 妹達関連企業 全社長の預金が外部流失 以上24時時点です。 まあこんなところかしらね。初戦は。 世界中が騒然としているわね。CNNでも速報か。 NY ダウが -7% 日経平均CME夜間が-10% 日本円は対ドルで5円高の85円ね。 ははは1兆円もうかったわ。 食蜂アンタも5000億円よ。感謝しなさいよ。 さあて寝よう。 所長と盛大にパーティしなくちゃね。 カイツ:ハア全施設壊滅デスネ マア 彼女以外地球上にこんなことができそうな 人物はいないでしょうネ 後は消化試合なんデスケドネ 上層部へ1件申請を出します。 実験の引継ぎデス。約300施設です。が・・この状況ダト少し 時間がかかりそうですね。 天井:何に?引継ぎ?利益が・・・わかってんのか? カイツ:彼女が介入したんデス。そのくらいは覚悟してクダサイ。 だが・・翌々日 さらに驚愕の事態が発生した。 御坂美琴のPC JST 9:00 24H JULY 2009 セカンドミッション開始 JST 12 00 24TH JULY 2009 セカンドミッションすべて終了 セカンド・ステージ開始 :300施設を経営する関連企業 ・全従業員のPC破壊 ・全従業員のスマホ・ガラ携の着信音に妹達殺害時の死亡時音声が設定され 設定がロック ・顧客データ10億人分流出 ・全企業の会計データ破壊。 以上すべて完了しました。 日経平均 ▲10%か・・経済恐慌ね。 まったく。少しやりすぎたかな。下手な軍事力より情報戦のほうが戦果がでかいわ・・ 私には向いててるな。電脳戦争。これは兄貴でも無理でしょ。 もういいかな。 所長、カイツさん天井さんへ電話してください。 終りにしましょう。 あ・・・その際に一言行ってください。 やめなければ、引継関連企業の全従業員の預金が流出し、お子様の 携帯に妹達の死亡映像を毎日配信しますとね。 今ならまだ間に合わうわよ。 天井さん。 小物は小物らしくきりきりするのよ。 御坂美琴のDNAをもて遊んだ、諸行は安くないわよ。 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン)
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前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/side by side ― バレンタイン ― 2月12日、常盤台女子寮、夜 日本の女の子達にとってはほぼ間違いなく注目される日、バレンタインデーを2日後に控えここに住む女の子は皆浮き足立っていた。 チョコを意中の男に渡そうと目論む者、ただ友達に渡そうと考える者、何やら怪しい薬を取り寄せてチョコに紛らわせ薬を飲ませようと企む者、と各々心の内に秘めるこそ様々だがチョコを大切な人に渡すというと根本的な所は共通してしている。 そんな中、230万人の人口を誇る学園都市にも7人しかいない超能力者、超電磁砲の異名をとる御坂美琴もそのような事を考えていた。 結論を言うと、彼女には想い人がいる。 嘗て彼女を絶望の淵から救い出してくれた人。 嘗て彼女にかけがえのない約束をしてくれた人。 その人、上条当麻である。 彼らの出逢いは6月、複数の不良に絡まれた時だった。 彼女は内心、バカな奴だと思っていた。 自分にそんな上っ面だけの偽善なんていらない、そんなものならない方がいい。 事実、彼が首を突っ込まなくても解決していただろう。 最終的に不良を追っ払ったのは彼女なのだから。 だが、その少年はあらゆる点で他の人と異なっていた。 まず第一に超能力者たる御坂美琴の電撃を浴びて無傷でその場をしのぎきった事。 彼が見せた正義は上っ面なだけのそれではなく、例えなにがおきても揺るぎない信念に基づいての行動であった事。 何よりも、自分が超能力者であることを知っても怖じ気づかず、妙に腰を低くしたりもせず、普通に他の人と同じように接してくれる事。 さらにその他様々な要因が重なり合い、極めつけは妹達の事件と偽デートでの約束。 今まで恋愛とはほぼ対局の場所に位置していた彼女でも、心底彼に惹かれるのは最早必然。 なので今まで大覇星祭、一端覧祭そしてクリスマスと数回にわたるアタックを重ねていたが、上条が鈍感であることと彼女が素直になりきれず、まだ想いは実っていなかった。 (バレンタイン…この日は、この日こそは自分に素直になって…アイツにこ、告白するのよ!) そう意気込んでいる美琴はまず手始めに上条の予定を聞くことにしたのだが、 (うぅ…やっぱり電話は緊張する…) やはり自分のほうから電話する事はまだまだ慣れていないこともあってか、実行にまだ移せないでいた。 今までは公園や帰り道などで会い、半ば強引に約束にこじつけていたが、今は夜で明日はチョコの準備やらで忙しくのん気に街をブラブラできない。 よって上条の体質上、当日には何が起こるかわからないため、14日の予定を確保するのは丁度同室の後輩の白井黒子が風呂に入っている今しかない。 …と美琴は頭ではわかってはいるのだが、今までの電話ではある意味まともに電話をしてまともな内容の会話をしてまともな終わり方をしたことがないので、自分が焦ったりや怒ったりで会話がちゃんと出来るかが不安だった。 (ええい、きっと成るように成るわよ!) ようやく決心のついた美琴は携帯のアドレス帳から、上条当麻を選択し通話ボタンを寸前で若干ためらったが、それでもなんとか押した。 トゥルル…トゥルル… コール音が1回鳴る毎に彼女心臓の鼓動が激しくなる。 (あぁもう早くでてよ!これじゃこっちがもたないじゃない!…にしてもなんて話を切り出せばいいんだろ…なんか急に話し出すのも…) このほんの少ししかない待ち時間にもかかわらず、理不尽になんの罪のない彼にあたってしまう。 そんな少しのことに対して怒ってしまう自分が嫌で仕方ない。 「ガチャ…おーっす、何か用か?」 「$\% !!??」 美琴はよくよく考えてみれば話の内容は決まりきっていたものの、それをどうやって聞き出すのかを考えてなかった。 なのでコールしている間にまとめようとするが、動揺している頭で迅速な処理が出来るはずもなく、突然の声に驚きの余り声にならない叫びを上げる。 「うわっ!!……ってなんだいきなり!」 「あ、ああアンタが急に声だすからでしょ!?」 「電話掛けてきたのお前だろ!!……はぁ、不幸だ…」 理不尽なのはわかっていた。 それは単なる八つ当たりな事もわかっていた。 しかし、美琴は極度の緊張状態に陥っていたため、まともな思考回路はどこかへ飛んでいってしまっていた。 (あぁもうだからそうじゃなくて!なんでこう上手くいかないのよ!) どうしてこうも素直になれないのか。 どうしてこうも簡単に理不尽なことをしてしまうのか。 美琴は自分の本心とは真逆の発言に苛立ちを覚えずにいられなかった。 「……んで?何か用があって電話かけてきたんじゃないのか?」 上条の声を聞き、幾らか正気が戻ってきた。 しかも、こちらから変に話を切り出すまでもなく向こうから話を持ち出してきてくれた。 このチャンスを見逃す手はない。 「ぁ…えと、その……」 「……まさか怒鳴るためだけにかけてきた、なんてことはないだろうな…?」 まずい、と美琴は思った。 いつもならば彼女はここで怒って、話が逸れ、挙げ句の果てには本題の話をできずに電話を切ってしまうだろう。 しかし、今日この時だけは事情が違った。 目的の日に、彼女の中に秘める想いを確実に告げることができるかできないかの瀬戸際なのだから。 恥ずかしい気持ちはあった。 苛立ちもあった。 だが今回だけはそれらを抑え、唯一の目標を果たすために口を開く。 「あ、あのね…今週末の日曜日、14日なんだけど……そ、その日空いてる?」 喋る内に少しずつ声量は小さくなっていたかもしれない。 でも電話越しの彼には確実に聞こえたはずだ。 美琴はなんとか勇気振り絞り、とりあえず1つの難関を突破できた事に安堵する。 「ん?14日なら午前中は補習だけど、その後なら空いてるぞ」 「本当に!?じゃ、じゃあその日の夕方いい、かな…?」 「ああ、いいぞ」 「よかった…んじゃ待ち合わせとか詳しい事はまた明日の夜にでもメールするから…じゃあね!!」 美琴は最後は約束を取り付けた事への安心から、気恥ずかしさが先行して早々に電話を切る。 (や、やった!約束できた!にしても疲れた…やっぱりこういうのは勇気がいるわね…) できたらこんな疲れる電話はもうしたくない、と一人呟きながらそのままベッドに横になる。 約束については嬉しい反面、ずっと緊張していたため終わった後の疲労感はすごい。 そのせいか、美琴は悶々として眠れていなかった最近とは対照的に、嬉しさと疲れが相まってすぐに眠りに落ちる。 背後からおぞましい怨念放つ者の存在に気づかずに… (お、お、お姉様が誰かと14日に約束を…キィィーーー!!) 怨念の根源、白井黒子は実は美琴が電話を掛け始めるほんの少し前に戻っていた。 彼女は美琴にも声はかけたのだが、何やらぶつぶつと呟きながら考え事をしていた美琴は全く気づいていなかった。 なので黒子は会話を一部始終を聞いていたのだ。 (まぁ照れていたお姉様を見れた事は良しとしましょう…ですが!お姉様があそこまでテンパる相手は恐らく、いや、あの類人猿しかいない!!…あんの類人猿めがぁぁぁぁあああ!!こうなったら明日にでも血祭りにあげててさしあげますわ!!) そんな上条への恨みを晴らそうと固く決意する黒子を背後に美琴はぐっすり眠っていた。 同日、上条宅 「何だったんだ?あいつ…」 上条は美琴との電話を終え、通信の途絶えた携帯を片手に疑問に思う。 何やら怒ったと思えば、次は黙る。 黙ったと思えば、14日予定を聞いてきた。 彼は美琴を色々とつくづく忙しい奴だなとも思う。 (にしても14日って…勿論『あの日』だよな?なんでまた俺…?) しかし、彼が一番疑問に思ったのはそれらではなく、女の子にとっては1年でかなり重要な日のバレンタインに自分を誘ってきた事である。 無論、それが嫌という訳ではない。 むしろ逆だった。 上条は美琴の事を好き、まではいかずとも気にはなっていた。 美琴は整った容姿とスタイルをもち、世界でもトップクラスのお嬢様学校の名門常盤台の学生、そして誰とでも分け隔てなく接することができて様々な人に慕われている。 そんな彼女を気にするなというのが難しいだろう。 さらに美琴は上条の記憶喪失についてカエル顔の医者を除けば、唯一知っている人間だ。 つまり上条は彼女に対して変に取り繕う事はしなくてもよい。 上条もそれらがわかっているからこそ気にはなっているのだが、彼の中でひっかかるところがあり、好きとまではまだいっていない。 それは彼女が名門のお嬢様学校とはいえまだ中学生であることと、そして何よりも自分の不幸体質にあった。 前者は世間体を気にせず、なおかつ自分がしっかり理性を保てば済む話だ。 だが後者はそうはいかない。 上条は自分が不幸なために人を好きになれば、他人にもそれが起きてしまうのではないかという事を恐れていた。 例がないので実際にあるのかはわからないし、他人に不幸が起きた事は今自分がもつ記憶の上ではない。 それでも上条は怖かった。 自分のせいで他人が不幸になること、幸せになれないこと、これらは彼にとっては一番許せないことである。 なので彼には人を気になることはあっても、好きになることには抵抗を感じていた。 そういうこともあり、一応恋愛には人並み程度に憧れてはいても、自分には縁のないものだと決めつけ、他人の心に気づかないというところに繋がっているのたが。 (……まぁいずれにしても、14日になればわかるか) 今いくら考えてもあくまでも推測でしかないからな、と上条は考えること一旦やめ、手に持っていた携帯をしまい、眠りについた。 2月13日土曜日AM6時、常盤台女子寮 御坂美琴のこの日の目覚めは早かった。 理由は言うまでもなく昨晩の出来事。 (私…ついにやったんだな…) 美琴は不意に携帯へ目を向けると思わず口元が綻んだ。 上条の予定を確保した今、もう彼女に迷いはない。 14日に上条にチョコを渡し、告白すると決心したからだ。 後は今日中にチョコを作ればそのための全て条件が揃う。 今日は忙しくなりそうだと意気込む美琴は起き上がり、顔を洗うために洗面所へ向かった。 途中、相部屋の白井黒子が「類人猿め…あの若造めが…」などとぶつぶつ言いながら何やら考え事をしている姿が彼女の視界の片隅に入ったが、今日つくるチョコの事と明日の事で頭がいっぱいなのでそんなことは勿論気にしなかった。 同日午前、とあるスーパー 意気揚々と材料調達に向かった美琴であったが、一つ問題があった。 (私、そういえばアイツの好み知らない…) 彼女今の今までただ漠然と『チョコをつくる』ことしか考えておらず、具体的にどんなチョコにするか、どの程度の甘さにするかなどを全く考えていなかったのだ。 さらに、それの指針となる上条の好みを彼女は知らない。 別に気持ちさえ伝わればいいか、とも思うがせっかくチョコを作ってあげるのだから喜んでもらいたい。 それらの思考が絡みあった結果、材料の調達もできず売り場の前で美琴は立ち尽くす事しかできなかった。 「あれ?御坂さんこんな所でどうしたんですか?」 美琴は突然声をかけられた方へ向く するとそこには頭に満開の花を乗せた初春飾利とその友達の佐天涙子が立っていた。 彼女達もまた明日がバレンタインということで、チョコを買いにここに足を運んだのである。 「え?あ、いや、ほら…その…」 突然声をかけられ、美琴は動揺する。 今のご時世、友チョコという言葉も存在するため、特に隠す必要もないのだが、やはり彼女にとっては何故だか恥ずかしさもありすぐに口を開くことはできなかった。 「もしかして、御坂さんもチョコですか?」 「ああ…うん、まあそんなとこかな」 なにやらはっきりしない美琴の発言に声をかけた初春は首を傾げる。 そこで隣にいる佐天が何かをひらめいたようにすると、急にニヤニヤとした顔で、 「あれぇ御坂さん、もしかして…明日手作りの『アレ』を好きな人に渡しちゃったりします?」 「ッ!!」 美琴はいきなり核心を突かれ、肩をビクンと大きくゆらし、一瞬で顔を真っ赤にそめる。 その反応を見た佐天はニヤニヤとした表情を崩さず、じっと美琴を見つめ、それは初春にも伝染していった。 (ビンゴ!?まさかのビンゴ!?) (この反応は…そ、そうなんですね御坂さん!) 普段は凛とした立ち振る舞い、はきはきとしてどこか男勝りな一面さえあるあの美琴が、恋する乙女のテンプレのような反応をみせた。 さらに彼女のこのような反応は二人は見たことがない。 したがって、まず間違いなく自分たちが言っていることは合っていると二人は確信する。 「ち、ちち違うわよ!大体、私には好きな人なんていないんだから!!」 「御坂さん、別に隠さなくてもいいんですよ?女の子なら誰でも通る道じゃないですか」 「ああもう!違うったら違うの!!」 美琴は2人に見つめられ慌てて取り繕うとしたが、波に乗った佐天はいくら否定されても止まらない。 なんだかんだ言っても彼女たちは年頃の中学生には変わりはない。 恋というものには当然ながら興味はあるし、それもあこがれの先輩の恋話となれば結果はどうなるかなど目に見えてくる。 「御坂さん好きな人ですか~。一体どんな人なんでしょうか…」 「ッ!!違うって言ってるのに…うぅ…」 そこに追い討ちをかけるような初春の一言。 否定しても2人は勝手に話を進めていき、美琴は涙目にしてバレる事を半ば諦め次第におとなしくなり、物を言わなくなった。 美琴としてもこれは初めての恋。 羞恥もさることながら、友達が相手であっても、どう話してよいものかはわからない。 「何か困ってる事でもあったら相談のりますよ?困っているように見えましたので」 そこに佐天が美琴に助け舟を渡す。 美琴は確かに困っていた。 しかし、彼女がそれを話すことは好きな人がいると話すということと同義で、この2人にはもう一生頭が上がらなくなると気がした。 それでも美琴は上条には喜んでもらいたい。 中途半端にやるよりは恥を忍んでで聞いてもらった方が、いい結果になるはず。 冷静に考えて1人で悩んでダメだったことから、今この差し伸べられた手を掴み相談にのってもらうことが最善と考えた。 「……誰にも言わないでね」 「え?あ、勿論ですよ!」 美琴念のために釘を刺しておく。 それに対し2人は初め本当にのってくるとは思っていなかったようで、一瞬驚きの表情を隠せなかったが、美琴の力になれるならとその後は胸をドンと叩き胸を張って答える。 (はぁ、後輩に頼ってて大丈夫なのかな私…) 普段は頼らない後輩に頼ってしまう自分に多少の不安と苛立ちを覚えるが、どれも彼が喜んでくれる事を考えれば少し楽になる。 そこでとりあえず彼女はどういう理由で悩んでいたのかを説明し、現状の打開策を考えることにした。 「-----という訳なのよ…私どうすればいいかな?」 「んー、ちょっと待ってくださいね…まだまさか御坂さんに本当に好きな人がいたことに対する驚きで頭が…」 こいつらは…と美琴は内心舌打ちする。 カマをかけてきたのはむこうなのだ。 無責任にもほどある。 「それじゃあ、その人はどんな感じの人なんですか?」 「へ?…言わなきゃ、ダメ?」 「それがわからないとアドバイスのしようがありません」 それもそうかと美琴は頷く。 どんな人かも分からないのでは話にならないのだが、やはり抵抗がある。 だが、そもそも1人で無理だったのだから相談にのってもらってるわけで、美琴には拒否権はない。 それがわかっていても恥ずかしいものは恥ずかしい。 悩みながらもようやく観念した美琴は顔を真っ赤に染めながら答える。 「えっと、そいつは年上で、バカで鈍感でムカつくけど、何かあった時は優しくて、私を救ってくれたり、守ってやるって約束してくれたりして…か、かっこよかったり…ゴニョゴニョ」 「おぉ!つまり、御坂さんのヒーローなんですね!?」 「ひ、ヒーロー!?そんな、あああアイツはそんな柄じゃ…」 ヒーローという言葉に過剰に反応する美琴に対し、なおもニヤニヤしながら美琴を見つめる2人。 だが、そのニヤニヤは先程までの好奇のものから羨望のものへと変貌していた。 (御坂さん、かわいいです!) (くー!いいないいな!私もそういう人欲しい!) 「あぁもう!そういうのはいいから、結局私はどうすればいいのよ!」 美琴はその空気に耐えられなくなり、周りの目も気にせず叫んだ。 美琴が顔を真っ赤にして若干涙目になっているを見て流石にこれ以上はと思った2人は追撃を止めることにする。 とはいえどんな人物かも全体を把握できずに、断片的な情報だけでは助言をしようにもたかがしれている。 彼女達も美琴同様大いに悩んだ。 「やっぱり…無理かな?」 美琴はその二人の様子を見て、申し訳なさそうに問いかける。 しかし、佐天と初春は美琴の力になりたかった。 普段そこまで自分のことを話さない美琴からこれだけの情報を受け取ったからということもある。 だがそれだけじゃなく、先輩で常盤台中学に通うお嬢様の美琴をなんとしても応援したかった。 しかも相手が美琴の初恋の相手だと言うなら尚更だ。 「んー、正直その人がどんなチョコをあげれば喜ぶかというのはわからないんですが、あたしが男なら手作り、それも御坂さんが頑張って作ったチョコを貰えればそれだけで十分嬉しいですけど」 「そうですよ。それに御坂さんの話を聞く限り、その人は人の気持ちを無下にするような人じゃないと思いますよ?」 「そう…かな?」 「少なくとも私はそう思いますよ。大事なのは気持ちですよ」 ねー♪と2人は向かい合って仲良く声を揃えてはしゃぐ。 (気持ち…そうよね、アイツなら私が気持ちを込めて作ったチョコを無下にはしないわよね) 依然としてはしゃいでる2人を横目に美琴は今まで心の中でもやもやとしていたものを断ち切る。 美琴は後輩にも頼ってしまったし、あまり知られたくないことも多々知られしまったが… (1人でダメだと思ったら他の人を頼ればいい…か、やっぱりこういうことも大事なんでしょうね) 以前妹達の件で鉄橋で言われた言葉を思い出しながら、その大切さを学んだ。 1人で悩むのは確かに辛い。 対して悩んでいる話題を他の誰かと共有することは楽だし、何よりも1人ではどうしようもない事も解決できる。 あの妹達の件がそうであったように。 美琴の性格上他人に頼りきるということはしないであろうが、それでも少しずつ他人を頼ることも覚えていこうと思えた。 「んじゃ初春さんと佐天さんはこの後どうするの?私は買い物するけど」 するべきことがみえたら早く行動に移したかった。 今心の中から溢れ出る強い気持ちが冷めない内に。 「私達もお手伝いします!と言いたいところですけど、こればっかりは御坂さんが頑張らないと意味ないですよね」 「あたし達のことは気にせず、チョコ作り頑張って下さい!明日、陰ながら応援してますよ!」 「そっか…それじゃ相談のってくれてありがと、またね」 「いえいえ、そんな礼言われる程のことしてませんって」 「お土産話期待してますよ!」 そういいながら、最後の最後で目の輝きを取り戻した2人と美琴は別れた。 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/side by side
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居場所 【本文】 美琴サイド ◆ 上条サイド ◆|◆ クリスマス ◆ 【著者】 月見里(12-676)氏 【初出】 2011/12/22 初投稿 【最終スレ投下日】 2012/12/26